研究課題/領域番号 |
24560706
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
堺 純一 福岡大学, 工学部, 教授 (30215587)
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研究分担者 |
田中 照久 福岡大学, 工学部, 助手 (90588667)
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キーワード | 鋼コンクリート合成柱 / 耐震性能 / 弾塑性変形性状 / 載荷実験 / 軸力 / 鋼材の幅厚比 |
研究概要 |
高い耐震性能を保持する鉄骨鉄筋コンクリート(以下SRCと略記)構造は鉄骨の製作管理および鉄筋の配筋,コンクリート型枠の製作などが必要であり施工性および建設費の点で課題がある.そこで,SRC構造のこの課題に対する解決法の一つとして,主筋およびせん断補強筋を省き,十字鉄骨とコンクリートのみからなる八角形断面を基本とした新しい鋼・コンクリート合成構造柱材(SC柱材)を考案した.本研究では,このSC柱材の弾塑性変形性状を調べることを主目的としている. 平成25年度は,SC柱材の弾塑性変形性状を調べることを目的としており,軸力比と鉄骨の幅厚比およびバンドプレートによる補強の有無が柱材の弾塑性変形性状に及ぼす影響を調べるため,計10体のSC柱材試験体を製作し,一定軸力と繰り返し水平力を載荷する実験を行った. 載荷実験を行った結果,以下のことが明らかとなった.1)フランジの幅厚比が20程度であっても,柱の軸力比n(断面の圧縮耐力に対する作用軸力の比)が0.3程度であれば,部材角が5/100radの大変形まで安定した挙動を示す.2)フランジの幅厚比が10程度であれば,軸力比nが0.5となる高軸力下では,部材角3/100radまで安定した挙動を示すが,それ以上の変形角になると,軸方向縮みが大きくなる.3)柱頭と柱脚部の材端近傍部で鉄骨フランジにバンドプレートを溶接することで,鉄骨の局部座屈が抑制されて,軸力比が0.5となる高軸力下でも,5/100radまで安定した挙動を示した.4)柱材の全面を鋼板で横補強した試験体も製作し,載荷実験を行ったが,部材の一部をバンドプレート補強した柱材の挙動の比較を行い,バンドプレートによる補強で十分な補強効果がある. 以上のことより,本SC柱は,SRC柱に比べてかなり施工性に優れ,SRC柱に比べて同等以上の耐震性能を保持していることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
八角形断面のSC柱材の弾塑性変形性状に及ぼす影響因子として,作用軸力,鋼材の幅厚比,コンクリート強度,バンドプレートの有無があることを実験的に明らかにしてきた.特に,コンクリートの拘束効果に及ぼす効果があることが,この合成柱材の特徴である.平成24年度に行ったSC柱材の中心圧縮実験結果より,鉄骨によるコンクリートの拘束効果を考慮したコンクリートの応力ー歪関係を追跡できており,SC柱材の弾塑性解析を行い,SC柱材の挙動を追跡できることがわかった. 以上のことより,弾塑性解析で柱材の弾塑性挙動を追跡できることが明らかとなったので,今後は,SC柱材の復元力特性について解析で検討する. 本研究の目的の大部分を達成したものと考えている.平成26年度は,この柱材の特徴を生かせる柱梁接合部のディテールの提案を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は,鉄骨によるコンクリートの拘束効果についてもう少し詳細に検討し,その拘束効果の定量的な評価法を明らかとするとともに,その拘束効果を取り入れた上でのSC柱の復元力特性の定式化を行う予定である. さらに,最終年度の平成26年度は,SC柱と鉄骨梁で構成された骨組を対象として,力学的に合理的で,省力化を進めた仕口パネルのディテールを考え,試験体を製作し,載荷実験を行うことにより,仕口パネル部の弾塑性変形性状を調べる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度はSC柱材の弾塑性変形性状を調べるために,試験体の製作および載荷実験を行った.SC柱材の弾塑性変形性状は,平成24年度,25年度の実験的研究で,当初の計画を遂行することができた.平成26年度は研究計画をさらに進めて,SC柱・鉄骨梁で構成された骨組の柱梁接合部の挙動を調べる予定とした.柱梁接合部の試験体の製作費を確保するために,次年度に予算を繰り越すこととなった. 平成26年度は,当初の3年間の研究計画を,さらに進めて,SC柱と鉄骨梁で構成される骨組を想定し,柱梁接合部の挙動を調べることにする.平成25,26年度の実験で明らかになったことを踏まえ,柱・梁間の応力伝達がスムーズに行える,施工性のよい柱梁接合部の設計を可能とするための基礎実験を行う予定である. 接合部の挙動を把握できる試験体の製作と載荷実験の装置の製作を行う費用として,平成26年度予算と合わせて,次年度使用額を充てることとした.
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