研究課題/領域番号 |
24560710
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中村 芳樹 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (30189071)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 省エネルギー照明 |
研究概要 |
まず,時間的な変動が大きい自然昼光を使った実験に不可欠な高速輝度画像測定システムを開発し,自然昼光を使った被験者実験を可能とした.次に,南側採光の昼光実験室を整備し,被験者を使った照明環境評価実験を実施した.実験は,夏季(8/26~9/9) ,秋季(9/25~10/20),、冬季(11/28~12/19)といった当初予定した季節すべてについて行い,実験に参加した被験者は,夏季11名,秋季7名,冬季11名で,実験の結果得られたデータは,さまざまな昼光条件,人工照明条件で下ではあるが,不足感0の評価(不足を感じるぎりぎりの状態)を689ケース,また不足感2(やや不足を感じる状態)については128ケースを収集した. 実験の結果得られたデータを,既往研究のデータとし比較検討した結果,自然昼光を用いた実験結果と疑似昼光(蛍光灯と乳白パネルを使用)を用いた実験結果には構造的な違いはなく,輝度分布が正確に把握されていれば,自然昼光であれ疑似昼光であれ,その光環境を同様の方法で評価できることが示された. 次に,研究成果を世界的にも利用させるための方策として,明るさ画像を作成する前段階で抽出できるコントラスト画像と近似画像を用いた検討を加えることとした.明るさ画像はこの二つの画像を重みづけ加算したものと定義できるが,この重みづけ係数についてはまだ国際的な合意が形成されていないためである. 検討の結果,まず視作業性については,紙面,モニタによらず,周辺とのコントラストが大きい場合は視対象の輝度を下げることができることが明らかになり,不足感0の状態を一つの関数で予測できることが明らかになった.しかしながら,部屋全体の光の不足感については,明るさ画像との組み合わせで予測精度は向上したものの,まだ完全に予測できるという状況ではなく,さらに研究を進める必要があることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度目標とした事項についてはほぼ達成できた.特に視作業性については,紙面作業,モニタ作業によらず,ほぼ確実な予測が可能となった.一方,空間の全体を見た際の光の不足感については,もう一段進んだ検討が必要であることが明らかになった.自然昼光の条件は,出現した条件を使わざるを得ず,その光環境を実験者が統制できない.したがって自然昼光を扱うかぎり,実験条件の違いと被験者の個人差が混在したデータとなる.視作業性については評価視点が明確で個人差が少ないためはっきりとしたデータを得ることができたが,部屋全体の明るさが十分かどうかについては,判断に個人差が大きく,はっきりしたデータを出すことができなかったのではないかと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
視作業性については,新たに導入したコントラスト画像と近似画像を用いることによって,ほぼ完全に予測できたが,部屋全体の明るさが十分かどうかの判断には,個人差を検討するための統制実験が必要である.部屋全体の光の不足感について,もう一度疑似窓を使った実験を追加し,個人によって評価の方法が異なったり,感覚が異なったりするデータを厳密に求め,検討をすすめる.一方,自然光の流入形態が異なる北側窓についても,やや現実のオフィスに近い条件の実験室を作成し,当初の予定通り実験を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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