本年度はまず、オフィスで行われる、紙面、およびモニターを併用する視作業に対する性能を評価するため、CA図を用いて分析する方法を試みた。CA図とは、筆者が新たに提案した輝度画像の解析方法で、視対象を検出サイズとするフィルタリングによって得られるコントラスト値(C値)と、視対象と背景を含む領域(視対象サイズの3倍程度の範囲)の対数輝度平均(A値)を用いて分析する。これを用いてこれまでの実験データを再分析したところ、モニター、紙面によらず、光の不足を感じる条件、まぶしさを感じる条件とも、CA図上で直線として示されることが明らかになり、CA図を用いれば、タスク照明の適不適を客観的に判定できることが明らかになった。 次に、空間全体について、光の不足を感じる条件を検討するため、今年度は全方位カメラを用いて測定範囲を広げた輝度画像を用いることとし、実験条件を追加した上で、これまでのデータと合わせて、空間の不足感を推定できる方法を検討した。全実験データを改めて分析したところ、輝度画像より変換される明るさ画像において、特定の範囲の値をもつ領域(7.5~9NB、および4~6.5NBの範囲)の割合を用いれば、高い精度で不足感の程度を推定できることが明らかになった。さらに、推定値と異なる条件を精査したところ、明るさ画像の分散が小さい場合には明るめになることがが明らかになった。 本研究の全体を通しての成果は次のようである。まず、(1)輝度画像を分析することで、タスク作業についても、空間全体についても、光の不足を感じるどうか、まぶしく感じるかどうかを判定できることを明らかにした。次に、(2)省エネルギーを実現する昼光と人工光を併用した照明設計に利用できる具体的な指標を提案した。以上より、(3)昼光と人工光を組み合わせた照明設計が輝度画像を利用することで可能となることを明らかにした。
|