研究課題/領域番号 |
24560715
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤本 一壽 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (90112309)
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研究分担者 |
平栗 靖浩 徳山工業高等専門学校, 土木建築工学科, 助教 (90457416)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 道路交通騒音の予測 / 騒音曝露人口の推定 |
研究概要 |
本研究は、高レベルの道路交通騒音に長期間曝露されることの健康リスクについて研究するためのデータ構築に向けて、[研究1]道路に面する地域における住戸ごとの道路交通騒音の予測法、および、[研究2]国勢調査などの入手可能なデータベースから住戸ごとの居住者数を精度よく推定する方法、について研究し、これら2つの研究成果を統合して、[研究3]高レベル道路交通騒音に曝露される人口の推定法を確立することを目的とする。 [研究1](担当:藤本一壽/研究代表者)では建物・建物群背後における道路交通騒音予測法を、[研究2](担当:平栗靖浩/研究分担者)では、数値地図から建物内の居住者数を推定する手法を研究し、[研究3](担当:藤本、平栗)では、これらの研究成果を統合させ、高レベルの道路交通騒音に曝露される人口の推定法を確立する。 初年度である平成24年度は、藤本は、「道路に面する地域における住戸ごとの道路交通騒音レベルの予測法」を研究した。これまで行ってきた直線道路に面する地域の住戸ごとの道路交通騒音レベルの予測法をふまえて、模型実験によって建物による騒音減衰量を求め、点音源モデルに基づく戸建て住宅群による道路交通騒音減衰量の新しい予測法を提案した。 平栗は、「国勢調査などの入手可能なデータベースから住戸ごとの居住者数を精度よく推定する方法」を研究した。急速に整備が進んでいる各種の地理情報について、データの種類や構造、収集方法などを調査・分析して、住居ごとの居住者数を効率的に推定するために有効なデータベースを選別し、住民基本台帳などの地方公共団体が保有する独自のデータも調査した。その結果、「基盤地図情報」、「国土数値情報」、「住宅・土地統計調査」、「国勢調査」が本研究で活用できることを見出し、これらの各種地理情報データを用いて、熊本市と岡山市を対象とした住居系建物の居住者数を試算した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[研究1](担当:藤本)では、点音源モデルに基づく戸建て住宅群による道路交通騒音減衰量の予測法を提案した。これは、わが国で最も一般的に用いられている「日本音響学会道路交通騒音予測計算法」にそのまま組み込むことができるだけでなく、沿道の戸建て住宅地の「騒音に係る環境基準」の評価に活用できる実用性の高い予測法である。そしてこの成果を、日本建築学会九州支部研究発表会(2013年3月)2編、日本音響学会騒音・振動研究会(2013年3月)で発表した。これは、本研究の交付申請書に掲げた研究目標を十分達成しており、“研究は順調に進行している”と自己評価できる。 [研究2](担当:平栗)では、道路交通騒音常時監視対象道路の沿道100mに立地する住居系建物に対する居住者数推定アルゴリズムを提案した。このアルゴリズムは、国土交通相国土地理院が公開している基盤地図情報2500と国土交通省国土政策局の住宅・土地統計調査、総務省統計局の国土数値情報および国勢調査結果に含まれるデータを活用するもので、いずれも無償公開されてため汎用性が高く、また道路交通騒音常時監視対象道路の近接1列目に立地する建物群(1列目)と2列目以降に立地する建物群(背後群)の別に1戸当たりの平均居住者数を推定するという独自性を有する。さらに、提案したアルゴリズムを構築し、政令指定都市の例として熊本市と岡山市に適用して居住者数の割り当て試算を行った。そしてこの成果を、日本建築学会九州支部研究発表会(2013年3月)2編で発表した。これは、本研究の交付申請書に掲げた研究目標を十分達成しており、“研究は順調に進行している”と自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
藤本は、初年度に提案した騒音予測式の妥当性を検証する。まず、初年度の実験とは異なった条件の模型実験を行い、提案した予測式が実際の市街地のような複雑な条件においても有効な精度を有することを検証する。次に、実際の市街地の道路に面する地域において建物群による道路交通騒音減衰量を実測し、予測式による推定精度を検討する。 平栗が前年度に構築したアルゴリズムは、熊本市と岡山市での調査結果を基に住居系建物ごとの居住者数を推定するものであるが、住居系建物全てに1世帯が入居していると仮定している(戸建て住宅と集合住宅を区別していないモデルである)ため、アルゴリズムの改良が必要である。そこで、初めに、建物面積等のパラメータや他の地理情報データベースを用いて、戸建・集合住宅の判別アルゴリズムを構築・付加することで、住居系建物の種別に沿った居住者数推定アルゴリズムとして高精度化することを目指す。その後、改良した居住者数推定アルゴリズムの汎用性を確認するために、熊本市と岡山市を除く他の政令指定都市に拡げたケーススタディを実施するとともに、山口県周南市において現地調査を行い、推定精度を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
藤本は、「初年度に提案した騒音予測法の妥当性の検証」を行う。このために実施する模型実験では、平成24年度と異なる条件の模型を製作するとともに(模型製作費)、音響計測システムの改良のために機材を追加する(備品費)予定である。また、実際の沿道住宅地への適用の有効性を検証するための騒音測定も予定している。この現場実測では、道路端と建物背後とで同時に道路交通騒音を測定する必要があるため、不足している計測器を購入する(備品費)予定である。また騒音実測補助には学生アルバイトを雇用する(謝金)。 平栗は、住居系建物の種別に沿った修正版の居住者数推定アルゴリズムを構築するにあたり、調査補助員を雇用する(謝金)。また、アルゴリズムの汎用性を確認するための調査において、地理情報データを購入し(消耗品費)、山口県周南市における推定精度検証のための現地調査において、調査員を雇用する(謝金)。そして、調査結果と推定結果を比較検討し、修正した居住者数推定アルゴリズムの推定精度を明らかにする。
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