研究課題/領域番号 |
24560716
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
萩島 理 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (60294980)
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研究分担者 |
谷本 潤 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (60227238)
池谷 直樹 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (70628213)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 空調負荷 / エネルギー需要予測 / 省エネルギー |
研究概要 |
TUD-PS は、住戸ごとに各居住者の生活行動スケジュールが15 分時間分解能で確率生成され、これに冷暖房のoff→on の状態遷移確率を重畳することで室側の熱負荷が求められる.さらに、生活行動に応じたイベント原単位を乗じることで水、熱、エネルギー需要を推定する。これら全てを統合することで、住戸、住棟、街区、都市スケールの15 分間隔時系列デマンドひいては最大デマンドの動特性を、モンテカルロシミュレーションにより求めるというフレームである.このモデルに関して、次の2点の改良、精緻化を行った. 第1には、エアコンCOP モデルの精緻化/ストックベースで観たエアコン、冷蔵庫等家電機器の機器性能分布予測のサブモデル構築を行った.TUD-PS を適用して多数住戸のモンテカルロシミュレーションをするには、住戸集団内での機器保有やスペック、さらに結果に有意に影響するとの点ではエアコンや冷蔵庫のCOP がどのような分布になっているのかを付与せねばならない.そこで統計資料に基づき、これらのストックベースの推計モデル、ひいては将来のストック予測モデルを構築した. 第2には、空調on/off、カーテン開閉、窓開閉を定義するサブモデルおよび季節による冷暖房の使用状況を記述するサブモデルに関して、抜本的な見直しを行った.従来モデルにより予測された空調運転状況は、既往の観測データに比べ運転時間が短く、空調のon/offが頻繁に繰り返されている傾向が見受けられた。そこで、暖房期間、冷房期間の定義方法を変更するとともに、空調設定温度に応じて空調on/off行動の状態遷移確率が決定されるようロジスティク関数の修正を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度の一連の作業は、当初計画段階では見落としていたTUD-PSの空調運転状況を記述するサブモデルの問題点に関して、その原因を特定し大幅な改善を行ったものであり、本研究課題の最終的な目的達成のため不可欠な課題が解決されたと考えられる。 なお、当初予定していた換気量の時間変動や室内換気を考慮したサブモデルの構築については、コンピューターのメモリ制約の関係から、抜本的な変更を行うことはできないと判断し、空調on/off行動とリンクした自然な窓開閉行動のサブモデルを組み込むように、方針の変更を行った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、TUD-PSの精緻化、改良の作業を行う。 加えて、構築されたRevised TUD-PS を適用し、系統的大規模な数値実験をスーパーコンピュータ上で実行し、社会要請上緊急性の高い課題に関して提言を行う. まず第1には大規模震災に対応した都市域ピーク電力デマンド抑制方策のシナリオ検討である.夏期ピーク電力デマンドの具体的抑制策が求められている社会要請に基づき、空調機利用手控えの効果(設定温度をどれ下げるor 開始をどれだけ我慢する?)、通風や日よけなどパッシブクーリングの諸手法、冷房COP の向上(高効率の新機種を導入する?それとも1 サイズダウンして部分負荷効率を上げることでも効果があがるのでは?)や諸機器の高性能化、さらには燃料電池、ガスエンジンなどデマンドサイド熱電併給コジェネ・システムの導入等々、様々な省電力方策を想定し、どの程度の効果が期待し得るのかについて、都市域全体のマクロな視点から検討し、対策を提案する. 第2には、省エネ、低炭素の観点からの人口規模に応じた適切なコンパクトシティのあり方についてのシナリオ検討を行う.今後、少子高齢化、技術の進展による家電や空調機器の効率向上を考慮した上で、様々な人口規模、密度の街を対象として都市構造集約化の手法やエネルギーシステム(自然エネルギー利用、コジェネなど)に関するシナリオを想定した中長期の将来予測に基づき、省エネルギーや低炭素化に対する効果を比較検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の作業はコンピューターによるシミュレーションが主となるため、大型計算機使用量、ワークスティーションの導入などに研究費の大半を充当する予定である。
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