研究概要 |
本研究では,与えられた年限(3年間)で次の3つの課題に取り組んでいる。(1) スリット開口部のための機械学習型ANC手法の考案,(2) スリット状のANC開口ユニットの設計,(3) ANC開口ユニットの試作および実証実験,である。 2年度目の平成25年度は,主として課題(2) に取り組み,研究代表者の所属機関が有する音響実験室内に実物大のスリット開口部を設け,ANCを適用する際の適切な制御位置について実験的に検討を行った。すなわち,騒音が到来する際のスリット周辺における複雑な音圧分布を計測し,周波数によって異なる最大音圧の位置を把握した。スリット開口を透過する騒音は,周波数によってスリット中心部の音圧が大きくなるもの(160, 250, 315, 400, 630 Hz)と,スリット中心部から離れた箇所の音圧が相対的に大きくなるもの(200, 500, 800 Hz)に大別された。このような現象は,スリット開口周辺では端部からの回折波が重なり合うことから生じると思われ,スリット開口のための制御位置を決定する際は,例えば,制御位置を1点ではなく複数点にするなどの工夫が必要であることが示唆された。課題(2) の研究成果は,日本建築学会九州支部研究報告にて公表した。 さらに,前年度に引き続き課題(1) に取り組み,騒音の到来方向の判別手法 (1-C) の検討を円筒形の住宅換気口を想定して行い,その成果を日本騒音制御工学会秋季研究発表会および日本建築学会大会学術講演にて公表した。また,(フィードフォワード型のANCに必要な)参照マイクロホンの特性を適切なものにするために,ビームフォーミング(遅延和法)を用いて指向性を付与する試み (1-D) も併行して検討した。
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