研究課題/領域番号 |
24560722
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
西岡 真稔 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40287470)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヒートアイランド / 変角光度計 / 双方向反射率分布関数 / 指向性反射 / 建物外壁 |
研究概要 |
本研究は、ストリートキャニオンにおける夏季の暑熱環境を緩和するために、建物外皮として適用可能な指向性日射反射体を開発することを目指し、指向性を有する反射体に期待される反射性能とヒートアイランド現象抑制効果を把握することを目的とする。研究の第1段階として、平成24 年度は、変角反射率測定装置の基本構造を構築するとともに、反射率測定の精度検討を計画した。変角反射率測定装置とは、直達日射を光源とし、供試体への入射角を可変とし、また任意の反射角において、その反射の輝度を測定する装置である。本研究で用いる反射ユニットのサイズは数cm~10cm程度であり、市販されている変角光度計により測定可能な試料サイズを大きく超過している。そのため、新たに変角反射率測定装置を構築し、太陽光暴露下で性能を検証するための計測手法を確立することが、本研究申請の主たる課題である。 平成24年度の研究成果として、光学ベースの上に供試体を設置し、反射率を測定するための放射輝度計、および任意の反射角において放射輝度を測定するためのミラーと回転機構を配置し、反射率測定装置(光学測定部)を構築した。反射率測定装置は、太陽を自動追尾する赤道儀上に取付け、供試体に対する日射の入射ベクトルを一定に維持しつつ、反射率測定を行う機構とした。 以上述べた測定装置の基礎的精度検証として、市販された変角反射率測定装置でも測定が可能な平板型反射体について、市販測定装置と製作した想定装置による測定結果を比較検討し、両者は良く一致することを確認した。その後、指向性反射体の基本形であるコーナーキューブ型反射体を製作し、本測定装置により測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績の概要で述べたように、平成24年度の計画目標であった反射率測定装置を構築することについて、目標を達成し、またその装置が有効に働くことを実験によって確かめた。製作した反射体は、コーナーキューブ型の4枚の反射面を持つ形状であり、鏡面反射率が極めて高いアルミ反射板S(ACA社ProtectAL)を使用した反射体Sと、拡散反射が主体となる陽極酸化処理アルミ板D(A1100-H14)を用いた反射体Dである。2種の反射体について、垂直入射について反射角0~30度の範囲で放射輝度の測定を行った。またその測定値を放射照度で除して、双方向反射率分布関数(BRDF)を求めた。 これと平行して、反射板Sと反射板Dについて、市販の分光光度計と変角反射率計を用い、反射板自体の反射特性として、分光反射率とBRDFを測定した。その測定値を用いて、数値シミュレーションを行い、コーナーキューブ型反射体のBRDFを推定し、測定結果と比較し検討した。数値シミュレーションプログラムは、本研究の課題である変角反射率測定装置の開発と平行して、プログラム開発を進めているものである。 実験と数値シミュレーションを比較した結果、全体の傾向と輝度のピークを外れた中間領域では、両者はほぼ一致した。鏡面反射性の強い反射体については、輝度のピーク付近で、両者に違いが生じた。その原因については、シミュレーションに用いた変角反射率測定装置と本研究で構築した装置の輝度計測センサーが異なることに起因するものと推測しており、理由の詳細を平成25年度の実験で継続して検討する。 以上、研究の到達点について述べたが、平成24年度の計画であった「変角反射率測定装置」のプロトタイプの構築と、反射シミュレーションツールの開発について、計画通りの成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究の主眼は、「(1) 指向性反射体の実用性を高める改良と試作」、「 (2) 反射率測定において回転機構を一部自動化し、角度の測定ピッチの緻密化を図る」の2点である。 指向性反射体の基本的要件として、鏡面反射によって指向性を高める必要があるが、これは同時に反射グレアの発生を招く懸念がある。そこで、視覚的要件から、鏡面性をある程度抑えること、また入射・反射の開口角を調整することで反射グレアを抑制する手法を検討する計画である。反射板の素材の選定、鏡面反射板と拡散反射板の組み合わせと形状の検討を行う。また、反射体の改良に伴い、反射の角度特性が複雑になると予想される。このような指向性反射体で生じる反射は、再帰反射方向成分とそれ以外の方向成分(以下、非再帰反射成分と呼ぶ)があり、非再帰反射成分は一般に等方的でないので、反射の可能性のある半球方向について、高密度にをスキャンする必要があると予想される。したがって、角度毎の測定に要する時間を短縮するため、電動モータで駆動する自動回転機構を組込むよう、変角反射率測定装置を改良する計画である。 この他、平成24年度の研究において、拡散反射が強い反射体については、現在用いている輝度計の感度の問題により測定精度が不十分との結論を得ており、より感度の高い光学センサーに変更して継続検討を行う計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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