研究課題/領域番号 |
24560722
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
西岡 真稔 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40287470)
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キーワード | ヒートアイランド / 変角光度計 / 双方向反射率 / 指向性反射 / 建物外壁 |
研究概要 |
本研究は、ストリートキャニオンにおける夏季の暑熱環境を緩和するために、建物外皮として適用可能な指向性日射反射体を開発することを目指し、指向性を有する反射体に期待される反射性能とヒートアイランド現象抑制効果を把握することを目的とする。 平成24 年度は、変角反射率測定装置の基本構造を構築するとともに、反射率測定の精度を検討した。その研究成果については、「再帰性日射反射体に関する反射特性の測定」(平成25年度)において発表し、測定値とシミュレーションにより、BRDFの全体の傾向が一致し、測定法が一定程度の精度を有することを確認した。一方輝度のピーク値と低輝度領域では両者に差が生じることもわかり、測定法に改良の余地があることも明らかとなった。 平成25年度では、前年度に明らかとなった測定法改良に取り組み、放射センサーを高感度のものに変更し、加えて放射サンプリング部の小型化により測定精度の向上を図った。 また、平成24年度の研究により、数値シミュレーションの解法にも改善すべき課題があることがわかったので、反射モデルとして修正Phong式を用いる方法から、実現象の再現精度が高いWordモデルを用いる方法へと改良した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度には、反射率測定装置を構築し、その装置が有効に働くことを実験によって確かめた。コーナーキューブ型の4枚の反射面を持つ指向性反射体2種を製作し、放射輝度の測定およびそれを放射照度で除した双方向反射率分布関数(BRDF)を測定した。また数値シミュレーションプログラムを作成し、測定値との比較を行い、全体の傾向と輝度のピークを外れた中間領域では、両者はほぼ一致した。鏡面反射性の強い反射体については、輝度のピーク付近で、両者に違いが生じた、 平成25年度の研究では、シミュレーションと測定値との差異を生む原因について検討深めることを第一目標とし、放射輝度の小さい領域における測定精度を向上させるために、高感度の放射センサーを入手し測定精度の改善効果を評価する実験を行った。これにより、測定に用いた輝度計の視野角が理論値よりやや大きく試料以外からの反射を計測していること、また測定試料からの反射が小さい場合には試料以外の背景反射が相対的に大きくなり、シミュレーション値との差の原因になっていることを確かめた。上記の問題を解消するためには輝度計を試料に近接させることが必要であるので、センサー自身による測定値への影響を最小化するため、光ファイバーでサンプリングを行う計測方式を検討した。光ファイバーによるサンプリングは背景反射により影響を低減させBRDF測定精度の向上に寄与することを確認したが、サンプリングできる放射エネルギーが小さいため反射の小さい試料に対しては測定精度が悪化する場合もあり、二者の得失を勘案する必要があることも分かった。 以上に平成25年度における到達点を述べた。25年度当初の目標ではBRDF測定時に回転機構を自動化する改良を行い、BRDFの角度ピッチを精緻化することとしたが、測定精度の向上のための輝度計改良を優先したため、これについては平成26年度の研究課題とする。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の目標とした2つの課題が未達成であり、これが3年間の研究課題の主眼であるので、平成26年度はあらためて、目標達成に取り組むこととする。「(1) 指向性反射体の実用性を高める改良と試作」、「 (2) 反射率測定において回転機構を一部自動化し、角度の測定ピッチの緻密化を図る」の2点である。 (1)指向性反射体の基本的要件として、鏡面反射によって指向性を高める必要があるが、これは同時に反射グレアの発生を招く懸念がある。そこで、視覚的要件から、鏡面性をある程度抑えること、また入射・反射の開口角を調整することで反射グレアを抑制するような指向性反射体を試作する。このような反射体の基本構造については平成25年度の数値シミュレーションにより検討済みである。 (2) 指向性反射体で生じる反射は、再帰反射方向成分とそれ以外の方向成分(以下、非再帰反射成分と呼ぶ)があり、非再帰反射成分は一般に等方的でないので、反射の可能性のある半球方向について、高密度にスキャンする必要がある。そこで、電動モータで駆動する自動回転機構を組込むよう、変角反射率測定装置を改良する計画である。
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