ストリートキャニオンにおける夏季の暑熱環境を緩和するために,建物外皮に適用可能な指向性日射反射体が有効であると考えられる.ヒートアイランド化を抑制するためには建物外皮の高反射化を進める必要があるが,中高層建物では屋上部のみ高反射化では量的に不十分であり,側壁部についても広げる必要がある,しかし,高反射化が有効であるためには,日射の反射方向を天頂付近を中心とする天空領域に限定することが必要であるからである.本研究では,指向性を有する反射体に期待される反射性能を把握することを目的とする. 建築外皮として現実的な反射ユニット(反射体アレイを構成する基本ユニット)のサイズは数cm程度と予想されるが,市販されている変角光度計により測定可能な試料サイズはこれより微小であり,反射アレイの測定ができないため,変角反射率測定装置を構築し,太陽光暴露下で性能を検証するための計測手法を確立した.変角測定のための試験体と放射輝度計の回転機構については,測定時の角度調整が必要な箇所を減らし測定を簡素化すると共に,測定可能な角度範囲を広げるよう,毎年度に改良を積み重ねた.放射輝度計については遮筒式を採用し,開口経と遮光筒の長さにより視野角を適切に調整する方法とした.平成24年度の研究結果により輝度測定に用いる受光器の感度が不足であることが判明したため,平成25年度では,より高感度の受光器に変更するなどセンサーについても改良を積み重ねた.また,平成25年度に本研究で開発した装置による測定結果とモンテカルロパストレーシング法による数値シミュレーションによる推定値を比較し,測定精度の検証を行った. 最終年度である平成26年度には,鏡面反射率の異なる3種類の建物用指向性反射体を試作し,変角反射率測定装置を用いて双方向反射率(BRDF)を測定し,反射体の指向反射特性を明らかとした.
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