近年、地球温暖化や都市のヒートアイランド現象など、高齢者、障碍者、乳幼児などのいわゆる温熱環境弱者にとって厳しい環境になりつつある。特に、頸損者・脊損者のように汗がかけないなど体温調節機能が欠如・低下すると、温熱環境の状況によっては生命の危機にもなりかねないことがあり、体温予測および制御方法の確立の重要性は高くなっている。本年度は、昨年度の成果をもとに、主に頸損者の体温調節に関する「温熱環境プロフィール」の検討を深化させるとともに、車いす等に装備することを想定した体温提示・予測システム開発に関する実験・検討を行った。 温熱環境プロフィールの検討と活用の検討について、その構造把握と各種要因の関係を具体化するための基礎情報として、頸損者会員による情報誌に投稿された体験談記事(約2900件)をテキストマイニング手法により分析した。頸損者の生活全般を心身・生活・環境等でカテゴリ化し、類似性や相互関連について分析した。また、普段行っている体温調節手段の関係を共起ネットワークとして抽出した。体温調節を含む健康管理と、福祉用具や都市・建築空間との関連は比較的弱く、体温調節が対処手段のみにとどまっている傾向がみられた。 体温調節予測・提示装置ための深部温検討について、前年度までのシミュレーションモデルと提示・支援装置の実用化には、深部体温のより精度の高いモニタリングが重点課題となった。そのため、新たに開発された深部温センサ(ヒータレス深部温度計)を用いて人工気候室ならびに日常生活場面での被験者実験(頸損者および健常者)を行って、その有効性について検討した。結果として、日常生活場面ではその携帯性も含めて実用化の課題が残された。
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