研究課題/領域番号 |
24560725
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
冨田 隆太 日本大学, 理工学部, 助教 (40339255)
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研究分担者 |
井上 勝夫 日本大学, 理工学部, 教授 (30102429)
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キーワード | 環境振動 / 鉛直振動 / ゴムボール / 振動感覚 / ランク評価 |
研究概要 |
平成25年度は、ゴムボール衝撃による床スラブの鉛直振動(体感振動)性能の評価方法の提案を行うための評価量について検討を行った。具体的な内容としては、平成24年度に引き続き、RC造の床スラブを対象として、振動感覚評価実験とそれに対応する振動応答物理量の測定・分析を行った。その結果、衝撃振動の知覚や大きさ度合については、振動応答物理量の最大値(例えば、VL(10)max等)と対応が良いことを明らかにした。また、気になる度合や不快度合は、振動暴露量に対応することを示し、30s程度までの短い継続時間の衝撃振動に対応する物理量の例として、VLeq(59dB)+5log(T)<常用対数>を提案した。なお、VLeq(59dB)は、VL(10)が59dB以上の範囲の等価振動レベルであり、5log(T)<常用対数>は積分時間項であり、T(振動知覚時間)はVL(10)が59dB以上の継続時間の総和である。また、59dBは評価実験から振動知覚域として求めた値であり、振動を知覚できない範囲には積分効果は当てはまらないと考えたことによる。さらに、30s程度を超えた衝撃振動の継続時間の検討として、10分程度までの継続時間を有する衝撃振動の場合には、気になる度合や不快度合と対応する物理量の例として、VLeq(59dB)+20k×log(T)<常用対数>を提案し、T(振動知覚時間)の長さによってkを変化させることで、気になる度合や不快度合と対応が良いことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、住宅やオフィス内で発生する人の日常動作(歩行,小走り,飛び跳ね等)によって床に発生する体感振動(鉛直振動)を対象とし、振動に対する建築物の遮断性能(建築性能)の測定・評価方法を提案することである。具体的には、建築音響の分野で広く用いられているJIS A 1418-2に規定されているゴムボールを環境振動の分野にも利用し、床に一定した衝撃入力を行い、床相互の相対的な評価が可能となる測定・評価方法を提案することである。さらに、それらを用いて、床の鉛直振動(体感振動)性能に対するランク表示を具体化することを目的としている。平成25年度は、研究実施計画に沿った研究計画通りに実施された。具体的には、振動感覚(知覚度合、大きさ度合、気になり度合、不快度合)と各種振動応答物理量の対応性について検討を行った。その結果、振動感覚と対応のよい評価物理量の提案を行った。また、測定方法の基礎的検討として、2種類の床を対象に、加振点及び受振点を変化させ、床の振動分布を明らかにした。これらの結果を基に、振動測定点の検討を行っていく予定である。また、予算執行もほぼ予定通りに行われた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である「ゴムボール衝撃による床スラブの鉛直振動(体感振動)性能の測定及び評価方法の提案」に向けて、今後は、平成24~25年度に得られた知見から、人の振動感覚と対応の良い物理量の妥当性を検討する。具体的には、RC造を対象に、床版の減衰特性の違いなども含め、いくつかの建物でも、同様の実験を行い、提案する振動応答物理量の妥当性及び必要であれば修正を行う。これらを通して、本研究で提案する振動応答物理量の適用範囲を明確にする。また、床スラブの鉛直振動性能の測定方法の検討を行う。ここでは、建築物の部位性能としての床スラブの鉛直振動性能を把握するために、加振点及び測定点の数や位置に着目した分析を行い、その妥当性を明らかにする。さらに、本研究で提案する測定及び評価方法の有効な範囲を明確にし、性能ランクの提案を行う予定である。また、鉄骨造の床スラブ及び木造床への適用、さらに床仕上げ構造の検討として乾式二重床構造への適用について、本研究で提案する物理量で対応できる範囲の検討も行っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
予算は、当初計画より執行額が少ないが、ほぼ予定通り執行した。なお、研究活動に影響はなく研究は予定通り進んでいる。 上記理由の通り、予算はほぼ予定額通り執行している。旅費及び謝金については、研究の進捗状況にあわせて、必要に応じて執行する予定である。
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