研究課題/領域番号 |
24560726
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
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キーワード | 住宅 / 現場研究 / 適応的快適性 / Griffiths法 / 快適温度 / 地域差 / 季節差 / 適応モデル |
研究概要 |
本研究では,関東の住宅のリビングと寝室における温熱環境の実測と,居住者の熱的主観申告調査を行い,快適温度の季節差,適応モデルの提案を行っている。調査対象地域は神奈川県、東京都、埼玉県と千葉県である。調査住戸数は121軒,調査人数は男性119人、女性124人である。得られた申告数は32,468以上である。 1.冷暖房未使用時に最も多く申告されたのは「4.暑くも寒くもない」であり,居住者は温熱環境に満足しているといえる。 2.Griffiths法で予測した快適温度は冷暖房未使用時で24.1℃,冷房使用時で27.0℃,暖房使用時で20.2℃である。冷暖房未使用時における冬と夏の快適温度を比較すると,9.0℃の季節差がある。 3.適応モデルを用いることで外気温度が分かれば,室内快適温度を予測することができる。 4.住宅とオフィスビルの適応モデルを比較すると,外気温が高い場合は類似しているが,外気温が低い場合は異なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では関東地域の住宅における温熱環境の実測と居住者の熱的主観申告に関する現場調査を行い,データ収集,データ入力,データ分析,論文発表などが順調に進んでいる。もう既に国内外の学会で数多くの論文発表を行い,「研究実績の概要」でも述べたように,居住者の適応的快適性のメカニズム,快適温度の地域差や季節差,適応モデルの検討に関する有意義な成果を得ており,達成度が非常に高い。建物に必要なエネルギーとそれによる化石燃料使用量の削減を目指し,日本の設定温度は冬に20℃,夏に28℃と推奨されているが,この値には特に科学的な根拠がないことから,本研究の成果は基準作成などに大いに活用できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、適応モデルの提案を行うために,快適温度と外気温度の関係についてさらに分析する。ASHRAEの適応モデルの基準では月平均外気温,CEN基準では移動平均外気温度を用いているが,それらについて詳細に検討する。既往研究と比較して,本研究の結果や結論の妥当性を検討する。特に,温冷感と気温・湿度などの重回帰分析を行い,それぞれの変数が快適温度に与える影響について検討し,高温多湿気候でも利用可能な適応モデルを提案する。 また、研究成果を国内会議(日本建築学会,空気調和衛生工学会など)や国際会議(Windsor,PLEA,ASHRAEなど)で発表する。また,研究成果を審査付論文にまとめて日本建築学会環境系論文集,Architecture Science Review, Energy and Buildings,Building and Environment,Building Research and Informationなどのジャーナルに投稿する。 さらに、本研究の成果を社会に広く発信するために,英国のHumphreys教授又はNicol教授を日本に招待してシンポジウムを開催する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品に関する支出を抑えることができたため。 データ分析用のパソコンを購入する予定である。
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