本研究では,関東の住宅のリビングと寝室における温熱環境の実測と,居住者の熱的主観申告調査を行い,快適温度の季節差,適応モデルの提案を行っている。今年度は自然換気時や冷房使用時のリビングにおける夏季の快適温度を求め,居住者が暑い環境にどのように適応しているかを,主として行動的適応に着目して考察した。 1.本調査で求められた快適温度は自然換気時・冷房時ともに27.5±2℃であった。この値は環境省が推奨してきた設定温度とほぼ同様であった。 2.冷房が「嫌い」な人と「好む」人の快適温度の差は,自然換気時・冷房時ともに約1℃あり,有意に差があった。冷房を「好む」と申告した居住者は「嫌い」と申告した居住者よりも快適温度が低かった。このことから冷房の好みは快適温度に影響していると思われる。 3.本研究の快適温度を適応モデルの基準(CEN 基準)と比較すると,自然換気時はCENの許容範囲内にあり,冷房時はCIBSEの許容範囲よりわずかに上方に位置し,本研究で対象とした居住者は広範囲に適応していたと考えられる。 4.行動的適応として検討した窓開閉率・扇風機使用率・冷房使用率は,室温や外気温度が上がるにつれて上がり,着衣量は外気温が上がるとわずかに下がる傾向がみられた。発汗感は室温が上がるにつれ上がる傾向がみられた。
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