研究課題/領域番号 |
24560728
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研究機関 | 松江工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山田 裕巳 松江工業高等専門学校, 環境・建設工学科, 教授 (30610787)
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キーワード | 悪臭 / 自律神経 / 快適性 / イソ吉草酸 / ヒノキ / 被検者 |
研究概要 |
本年度は、悪臭濃度の違いが作業性と疲労に及ぼす研究と悪臭の改善技術として木の香りを用いた快適の持続性に関する研究を行った。 悪臭濃度の違いが作業性と疲労に及ぼす影響に関しては、異なるイソ吉草酸濃度の体感を実現するために、臭気を発生する吸気口を顔に近づけて体感することができる臭気発生装置を製作し、検証を行った。その結果、主観的評価では、イソ吉草酸が存在する場合、不快と感じるものの、低い濃度条件と高い濃度条件に有意差が見られなかった。これは、所定の濃度を超えた場合、主観的な差が生じにくいことが考えられた。臭気環境下でのp-ツールを用いたパフォーマンスへの影響実験から、臭気環境下において作業速度および正答性を低下させたものの自律神経系評価への影響は臭気条件と臭気発生無し条件の優位差が見られなかった。その原因として今回の実験で用いた臭気発生装置の臭気口から発生する風が顔に当たることが被験者にとってストレスとなったことが考えられた。 次に悪臭防止技術として、木の香りの体感による快適性評価を実施した。嗅覚は、順応が知られていることから、木の香りのゆらぎが快適性に及ぼす影響を明らかにするために、「香り発生なし」、「連続発生」、「5分間香り体感・5分間無臭」、「5分間香り体感・2分間無臭」の4条件で体感実験を行った。その結果、香りにゆらぎがあった場合、快適性をより維持できる知見を得ることができた。また香り発生停止後、一定時間は臭気強度が残るが、快適性はほぼ0になることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、臭気が自律神経やパフォーマンスへどの程度影響するかを明らかにしたうえで、その改善の方法を探るものである。現在までに、臭気濃度の違いによる影響と改善技術の一つの方法である木の香りの体感による快適性に関する検証を推進した。臭気濃度の影響に関しては、異なる臭気濃度を体感させるために、被験者の鼻部のみに臭気を供給する装置を製作し、作業性評価のためのPC作業を行いながら、所定の濃度を体感することができる機構を開発した。また、前年度同様、実施にあたっては学内の生命倫理審査委員会による審査により、パフォーマンス評価として、p-ツールと呼ばれる実務能力評価用ソフトおよび自律神経評価機器による被験者を使った測定を実施した。 本年度は、臭気の濃度の差が快適性・作業性・自律神経に及ぼす影響を明らかにすることを目的としたが、作業性に関しては濃度の差の影響が見られたものの快適性および自律神経への影響は明確にはならなかった。一方、改善技術である木の香りによる快適性の持続性能については、悪臭を伴わない環境下において、連続的な香りの体感が順応によって快適性が低下したのに対し、パルス状での体感が順応をリセットさせ、快適性を持続させる効果があることを明らかにした。 以上、悪臭環境の心理的生理的影響および悪臭を伴わない環境での快適性の持続に関する結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進として、最終年度は悪臭環境の改善のために木の香りの活用の可能性を探ることを目的とする。具体的には、臭気物質としてイソ吉草酸を対象として、イソ吉草酸が存在する臭気環境下において、被験者にヒノキの香りを様々な発生パターンで体感させることで、臭気の不快さを改善する具体的な条件を明らかにする。このため、今後の研究の推進方策として、以下の検討を進める。 1)イソ吉草酸を用いた臭気環境を臭気強度2(何のにおいか判る弱いにおい)に設定した状態において、ヒノキの香りを同時に発生させる。この際、ヒノキの香りの発生条件は、連続発生およびパルス発生とする。これら快適性および健康性に及ぼす影響を被験者を用いて明らかにする。 2)所定濃度のイソ吉草酸を体感した後に、ヒノキの香りを体感させる。この際、発生条件は、発生無、連続発生およびパルス発生とする。これら快適性および健康性に及ぼす影響を被験者を用いて明らかにする。 以上の推進を行うことで、最終年度として悪臭の健康に及ぼす影響とその改善手法の基礎情報をまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、臭気環境改善のためのヒノキの香りの体感による快適性持続に関する研究を推進するために、臭気を発生する吸気口を顔に近づけて体感することができる臭気発生装置を作成し、検証を行った。検証を進めるにあたり、臭気濃度の連続的な確認が必要となるが、そのモニタリングのための検知管の購入が当初予定より少なく、次年度使用額が生じることとなった。 最終年度の実験を推進するにあたり、臭気体感装置にヒノキの香りを加える装置を追加するための費用として使用する。また、被験者に対する心理生理評価試験を行うための対価として利用する予定である。
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