研究課題/領域番号 |
24560732
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
木下 勇 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (80251148)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 災害復興 / まちづくり / アイデンティティ / 持続可能性 / 東日本大震災 |
研究概要 |
本研究は災害復興地域における地域アイデンティティと持続可能性との関連を分析し、地域アイデンティティを継承し、持続可能なまちづくりにつなげていく理念と手法のあり方を探り、今後の復興まちづくりに寄与するために下記の3点を明らかにしようとしたものである。1)人々の心情の中にある地域のアイデンティティ(後述するように個人のアイデンティティとも関連)を表す風景やその要素を抽出する。さらに2)海外の先進事例からその具現化の方法の情報を整理し、地域アイデンティティと持続可能性との関連を復興まちづくりに適用する。3)それをモデル的にアクションリサーチとして実践して地域アイデンティティを継承し,持続可能なまちづくりに展開していく理念と方法論を構築する。 そこで平成24年度は下記の点を行なった。 1.国内の被災地域の復興計画が策定されている内容をレビューして、地域アイデンティティに関する記述をリストアップした。 2.対象地域において被災者へのインタビューにより被災者の心情や意識の中の地域のアイデンティティに関わる要素を抽出した。3.対象地域における復興まちづくりにおいて地域アイデンティティを継承する持続可能なまちづくりのあり方を求めて中高校生のワークショップに関わり、その分析を行なった。4.海外の災害から復興まちづくりにおける地域アイデンティティの扱いについて住民参加型として米国、地域アイデンティティと環境・エネルギー面の先駆例としてスイスやドイツの事例を調査した。5.地域アイデンティティが持続可能なまちづくりにどう結びついていくかを環境・社会・経済面のつながりについて検討を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由の大きな要因は被災地の復興の進展が予定より遅く、またこのようなテーマでのワークショップの設定が困難な点にある。現在の状況は下記の通り。1. 国内の各地域の災害復興計画のレビュー:被災地域の復興計画の内容をレビューを行なった。 奥尻島復興計画、阪神淡路大震災、新潟県中越及び中越沖地震時の復興計画レビューを行い、被災地のいくつかの復興計画のレビューを行なっている。 2. 対象地における地域アイデンティティの要素:被災者への聞き取り(半構造化面接)やイメージマップ調査で類型化、アンケート調査の準備をしている。 3. 対象地域における復興まちづくりにおける地域アイデンティティ:住民参画のワークショップではアイデンティティ形成期にあたる中高校生のアクションリサーチとして実施した。 4.海外の事例における地域アイデンティティと持続可能性に関する調査 ・米国のカトリーナ台風(2005)災害後の復興計画:低所得者層の最大の被害地では7年経った後も復興できていない地区や、ベトナム人コミュニティの結束力の高い地区では完全に復興している等の地域差があり、社会的結束力とアイデンティティの関係がこの経過から明らかになっている。・ スイスの2005年水害後のまちづくり及びジュネーブでの世界復興会議(2011)における地域アイデンティティの扱いについては情報を収集している所であるが、ドレスデンの水害の後の復興については伝統的な景観を再現するアイデンティティの強さと、河川沿いの洪水域のオープンスペースを中心とした、自然地形や自然河川の流れに逆らわない整備が元々の成り立ちのアイデンティティ回帰となって都市開発のビジョンにつながっている。
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今後の研究の推進方策 |
時間の進行に伴い、まだ十分に情報がない地域の復興計画の分析の補足を行う。対象地域は陸前高田市、南三陸町、石巻市から中心の地域を絞っていくか可能性のある地域をさぐりながら行なうか調査は継続して行い、ワークショップ等のアクションリサーチも継続して実施する。海外調査はニュージーランドの復興がアイデンティティの点から注目されるために補足の調査を行う。被災地の復興まちづくりのために海外共同研究者を招聘して議論を行い普及啓発のためにシンポジウム等のスタイルで成果の還元を行う予定であるが、その点は被災地の受け入れの状況にもよるので流動的である前提で調査を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の残額は、被災地のワークショップが計画した以上にはできなかったため発生し、その分を24年度に行なった中高校生ワークショップの成果を25年度にカトマンズで開催される国際会議で発表する旅費に使う。25年度計画の当初予算は計画通りに図書、資料購入費、旅費等に使用する。
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