研究課題
平成26年度は最終段階として地域アイデンティティの持続可能性との関連を総括した。環境面(エネルギー、自然環境を含む)、社会面、経済面の3つの側面から、地域アイデンティティの継承がどのような利点、課題があるか理念も含めて整理した。環境面では、沿岸部の防潮堤、丘陵地の開発、地盤面のかさ上げといった巨大土木工事の環境面の改変、地域の文化的景観の保全や震災遺構等の議論に地域アイデンティティも溯上にあがっている。社会面では、復興の長期化に伴い、若年層の流出がより深刻となり、高台移転や復興公営住宅の新たなコミュニティ形成が課題となっている。経済面からは土建業はじめ復興関連の産業は活性化しているが長期的観点からはまだ回復しているとは言い難い。どちらかというと県庁所在地の大都市に集積し、地域アイデンティティの面では地場産業、持続可能性の面では担い手育成が課題である。復興計画では再生可能エネルギー等持続可能な開発をうたうものの、現状は中央集権的な大都市集積、画一的な商業集積、住宅地開発という地域アイデンティティの低下、地方の体力低下を食い止める展開になっていない。そういう中で、石巻2.0のように行政主導ではなく市民の主体的な展開に、外部の専門家が協力して、中には移住しながら、地域の文化的脈略に外の風を組み合わせた創造的な事業が生み出されている例が各地にみられる。手づくり的に「まち育て(アーバン・ハズバンドリー)」とでもいうべき、コミュニティビジネスも含めた動きである。またそれらには中高校生参画の復興まちづくり等次世代の担い手を育てている動きがある。地域アイデンティティを創出し、環境、経済、社会の各側面を総合した持続可能なまちづくりの展開となっている。このような動きはクライストチャーチ他海外の復興まちづくりにおいても共通して見られた傾向である。
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