研究課題/領域番号 |
24560736
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松村 秀一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00199853)
|
キーワード | 建築ストック / 職能 / 専門家教育 / リノベーション |
研究概要 |
本研究は、空き家や空きビルに代表される日本の余剰建築ストックを有効活用することで、人々のより豊かな生活空間を実現する仕組み、とりわけ専門家に求められる新たな機能に着目する。具体的には、国の内外において実際に行われた建築ストックの有効活用例を主導した専門家を対象とした詳細且つ広範な調査に基づき、建築ストックの有効活用において求められる専門家の機能を抽出・整理するとともに、それに基づいた新たな専門家教育の内容を具体的に提案することを目的とする。平成25年度は主として以下のように研究を進めた。①昨年度の結果に基づく専門家に求められる機能の抽出・整理。昨年度の仮説に一つ機能を加え、新たな専門家の機能を「生活する場から発想する」、「空間資源を発見する」、「空間資源の短所を補い長所を伸ばす」、「空間資源を『場』化する」、「人と場を出会わせる」、「経済活動の中に埋め込む」、「生活の場として評価する」の7つから成るものとした。②上記の7つの機能を中心に、昨年度の聞取り調査等の内容を整理しまとめた。この成果に基づき「建築-新しい仕事のかたち 箱の産業から場の産業へ」と題する単行本の原稿を執筆し平成25年12月に出版した。③上記の取りまとめの内容に基づき、それを補強するために、昨年度聞取り調査等の対象とした15名の特徴的な活動形態を有する専門家に対する意見聴取を実施した。そして、この意見聴取の内容を記録としてとりまとめた。④上記の国内調査等と並行して、欧州での専門家教育の変化を把握するために、欧州4カ国4大学を訪問し、大学院教育の実態を調査するとともに、新しい専門家教育に関連する資料を収集し、整理した。⑤昨年度実施した工務店、住宅メーカー、不動産会社等を対象とした聞取り調査の結果を、比較的大規模なリノベーションの需要と供給の特性を中心に整理した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、最終年度にとりまとめる計画であった新たな専門家の機能に関する整理を、2年度目である平成25年度に行い、その成果に基づいた単行本を出版し、広く世に問うことができた。そのことによって、広くこの整理に対するフィードバックを得ることができ、最終年度の成果をより社会に普及しやすいものにすることができると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成26年度は、第一に25年度に実施した専門家に対する意見聴取の成果を取りまとめ、本研究で得られた新たな専門家の機能の内容を補強し、公表する。第二に、工務店等による比較的大規模なリノベーションの需要と供給に関して得られた知見を取りまとめ、公表する。第三に、国内外の建築教育等において、上述の新たな専門家の機能に関わる内容が教えられている例を調査・抽出し、その詳細を把握する。そして、それらの成果に基づき、新たな専門化教育体系案を策定する。
|