研究課題/領域番号 |
24560739
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
藤岡 泰寛 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 准教授 (80322098)
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研究分担者 |
新井 信幸 東北工業大学, 工学部, 講師 (20552409)
小杉 学 東北工業大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30410856)
安武 敦子 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60366432)
原田 陽子 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00377475)
大原 一興 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 教授 (10194268)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 郊外住宅地 / 団地 / 高齢化 / 人口減少 / 空き家 / マネジメント / 近居 / ゆかり |
研究概要 |
本年度は都市近郊・郊外エリアが直面する課題抽出を目的に各フィールドでの調査研究を行った。 まず、首都圏研究として、茅ヶ崎市における神奈川県下最大の郊外賃貸住宅団地建替え事業に際し、住民自治活動と連携した居場所構築の取り組みを継続的に行った。また、住民による緑化活動の分布・ストラクチャと日常的な外出行動との関係から、緑や歩行者路の全体システムを上位計画として重視することがその後のマネジメントにも良い影響を与える可能性があることを示した。横浜市内で最も高齢化の進む旭区内の丘陵住宅団地では、高齢期の外出を促す要因としての子世帯との近居の可能性について居住者ヒアリングを行い、具体的な繋がりと外出への動機づけの例を把握した。また、団地周辺に広がった戸建て住宅地を対象とした調査からは、土地勘や親族近居等の何らかの「ゆかり」が入居動機(購入動機)としても大きいことを明らかとした。一方で、空き家化の進行も明らかとなり、繋がりをマネジメントしつつ既存のストックと結びつけていくことの重要性を指摘した。 次に、地方都市研究として、長崎市については典型住宅地の抽出作業を行った。長崎市では既往研究から戸建て住宅地の空き区画が約1/6程度存在していることが分かっているが、長崎駅を中心とした5~12キロ圏内で今なお住宅地開発が進行している。1999年以降の開発団地数は10団地に及んでおり、このような両面の特性を把握することが重要である。仙台市においては、鉄道沿線の郊外住宅地開発と災害公営住宅計画が連動しながら検討されているケースを重点的に取り上げた。被災後2年目の局面においては具体的に希望のもてる計画が最優先であるとの立場から、仮設住宅自治会や、住民有志による検討グループとともに災害公営住宅構想づくりを企画し支援した。また、仮設住宅コミュニティの特徴をヒアリングにより把握・整理し活動年表のかたちでまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は非コンパクトな区域における新しい計画概念構築とその一般化のための方法論構築にあり、各フィールドにおける具体的な課題把握と、横断的な議論の両面の取り組みが必要とされる。この点からすると、初年度は各フィールドにおける課題把握が具体的に進むと同時に、横断的に論じるための共通課題も発見できた。たとえば空き家・空き地・空き室の進行については、首都圏においても地方都市においても郊外エリアでは共通してみられた。一方で、これらのエリアを俯瞰すると局地的には新規開発が進んでいる地区もあり、郊外エリアの縮減の様態は決して一様ではないこともわかった。つまり、たとえ大きなインパクトではなくても一定の地域流入層をきちんと把握し、持続的にマネジメントしていくことが重要であることが示唆された。これは郊外住宅地を硬直的に捉える面的思考ではなく、ひとつひとつの住宅・住戸や宅地を生活者の目線でどのように繋ぎ合わせていくかといった、点をつなぐ創造力・想像力が求められていると言える。高齢化の進む老朽団地周辺の戸建て住宅地では、新規流入層の約4割がもともと地域に土地勘があったり、近隣に親族が居住していると回答しており、何らかの「ゆかり」が入居動機(購入動機)としても大きいことを裏付けている。点と点をつなぐ線に多様な意味を見出し、それらの集合体が地域のまとまりを生み出すとすれは、このようにしてできる柔らかい圏域をいかにして持続可能な計画目標として持ちうるかが次の課題である。この点については、建替えの続く大規模団地における居場所構築(コミュニティカフェ)の試みや、災害公営住宅構想づくりにおける計6回の住民ワークショップが参考となろう。即ち、縮減社会においては世代継承性(Generativity)を強化すること、つまり、語らい・対話の機会と場の重要性が相対的に増すことが予想される。今後の検討課題である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、まず各フィールドにおける調査研究の範囲を拡充することが重要であると考えている。本研究では仮に、都市中心部からのスプロールの影響を直接受ける地区を都市近郊、直接受けない地区を都市郊外と区別しながら研究を進めることとしており、引き続き首都圏および地方都市において典型住宅地の抽出を行う。その上で、各フィールド(住宅地)の空間変容(時間軸上の開発の進展や空き家化、空き宅地化の進行など)を空間情報としても比較分析可能なもの(たとえば縮尺をそろえたマップ、GISデータ等)に加工していくことも予定している。 また、都市郊外・近郊エリアには市街化されていない地区も多く残されていることから、これらの地区の特徴でもある緑農地や川などの自然環境資源と居住との関係をどのように構築しうるかについて調査研究を行う。具体的には農的空間資源の抽出や利用ニーズ調査、人口減少により廃校となった小学校の跡地利用モデルスタディにおける緑農地視点の導入可能性などについて検討する。次に、初年度に示された研究課題についても継続して取り組むことが重要であると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費(23,451円)については、年度をまたぐ調査研究の使途にあてる。具体的にはアンケート調査の配布・回収が終了しているが、データ入力が未着手のものの作業にあてる謝金や、初年度末に実施されたワークショップのデータ入力作業にあてる謝金等を予定している。いずれも次年度も継続して取り組まれる前提で進められた調査研究であり、研究遂行上の課題はないものと考えている。
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