研究課題
社会的企業研究にはいくつかの切り口がある。組織の性質面からは、市場性と社会性の2軸で事業体の特性を測る(2006. 谷本)のが基本的アプローチである。また、ヨーロッパとアメリカにおける歴史背景の違い(2011. 秋山)、社会的・連帯経済体制概念の基礎としての議論(2013. 粕谷)などがある。日本においては、民主党政権時の「新しい公共」宣言を通じ注目されるようになった。本研究では同宣言における「新しいサービス」が興る場所を農業・農村とし、「その果実が適正に」戻り「生活が潤う」対象を農村および都市生活者の双方と捉える。この点において、地域の問題解決を第一義とするコミュニティ・ビジネスと区別する。農村型社会的企業の定義を、①農業・農村の資源を活用した事業である②農業・農村が持つ価値の保全をサービスや商品に表現し、社会に発信している③都市住民自身が、その価値が自らにとっても有益であると認識している④それにより収入を得、当該企業の経営が成り立っていることとした。経済産業省発行「ソーシャルビジネス55選」所収の事業者および独自候補を計20件の中から、(株)ぶどうの木(富山市)、(株)飯尾醸造(京都府宮津市)、共働学舎新得農場(北海道新得町)、(株)四万十ドラマ(高知県四万十町)、(株)秋津野(和歌山県田辺市)に現地調査を行った。いずれも一般市場に流通する商品を販売しているが、地域資源(景観や環境含む)の価値を都市に発信することで購買者を獲得している。また、その資源を守ることが自身にとっても必要と考える消費者のネットワークができており、それぞれ現場に足を運んでいる。以上のような要素が共通していることから、これを農村型社会的企業の一つのビジネスモデルと位置づける。なお、潜在的農村型社会的企業を対象にワークショップを行う計画であったが、本期間中では実施できなかったため、今後の課題としたい。
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農業経営研究
巻: 53巻3号 ページ: 87-92
Asian Rural Sociology
巻: No.5, Volume2 ページ: 7-14