研究課題/領域番号 |
24560748
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田上 健一 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (50284956)
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キーワード | BOP / 低所得者 / 住宅供給 / 住宅計画 |
研究概要 |
本研究の目的は、開発途上国の基幹的都市問題である低所得者用住宅を対象として、既存政策制度の問題や低所得階層の生活実態調査から居住環境に関わる潜在的ニーズを抽出し、BOPによる計画・運営・コストの仕様等を検証することにより、持続的な住宅地の運営管理も含めたBOPモデルによる低所得者用住宅事業の可能性を検討・提案することである。 25年度は、低所得者用住宅における金融制度の枠組み、およびフィリピン国内NGOのGAWAD KALINGA、KASAGANAKA等が供給する特徴的な住宅の現地調査を行った。フィリピンの低所得者用住宅では、住宅を購入する場合、NHA等の国家住宅機関により定められたローン契約が基本となる。それに対して無担保で提供されるマイクロファイナンスの融資は、居住者の零細事業の進展を促進させ、自力で資産増加が期待される。しかし、増加した貯蓄は、供給された住宅に対して積極的な投資が行われる例は少なく、食・教育・医療といった低所得者層が抱える生活上の問題に随時用いられることが多く、低所得者層における住宅分野のニーズを満たす金融体系が求められているといえる。 GAWAD KALINGAでは、居住者の建設作業への参加すなわちスエットエクエティを基盤として、建設作業費の削減、住戸の維持管理技術の習得、新居に対する自尊心の高まり、相互扶助精神の推進を目標とするスラム改善が実現されている。また、KASAGANAKAはマイクロファイナンスによる居住改善事業を行っており、小規模の住宅改善事業と住民個々の家計の関係を把握することができた。 初期投資の回収が困難とされる住宅供給事業においては、関係する企業などのステークホルダーに有益な価値を提 供する住宅供給形態を確立することが重要となる。その点において、現地NGOの取り組みは限定的であるが持続可能な資源供給が可能となっている事が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低所得階層の生活実態調査は概ね良好に進んでおり、居住環境に関わる潜在的ニーズを抽出することができた。しかしながら、BOPによるフィージビリティスタディはまだ途中段階であり、BOPモデルによる低所得者用住宅事業のモデル検討をさらに進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
BOP事業に関係する企業などのステークホルダーに対してのヒアリングや事業可能性の一層の検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年11月のフィリピン中部大型台風の影響により、現地調査計画が中止されたため。 最終年度に企業等の調査を集中的に行う。
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