研究課題/領域番号 |
24560750
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝男 宮城大学, 事業構想学部, 助教 (80448620)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 復興まちづくり / 住民主体 / 協働 / 人的支援 / 地域コミュニティ |
研究概要 |
本研究では、東日本大震災における地域コミュニティ主体による復興の展開に着目し、地区別復興まちづくり計画策定の展開とその手法について考察してきた。また、被災後コミュニティ機能の補い役と行政と住民のつなぎ役として宮城県で導入されている「復興まちづくり推進員」の取り組みを通じて中間支援のコンテンツと推進機関となる中間支援組織のあり方についても実証的に調査研究してきた。主に東松島市、山元町の復興まちづくり協議会、丸森町羽出庭地区(宮城県集落力向上支援事業)の取り組みを中心に調査に取り組んだ。 とくに東松島市では「東矢本駅北まちづくり整備協議会」と「野蒜まちづくり協議会」の集団移転に関わる話し合いに参加し、移転後の地域コミュニティの形成に向けた推進体制のあり方を検討している。状況の激しい変化に適合できる地域コミュニティの再生と将来的な自立を促していくに当たっては、住民だけの力ではその達成は厳しく、中長期の視点で地域コミュニティをサポートする後方支援体制の構築が重要であると考察している。その一つの形として、行政との協働を前提とした地域内外の組織や団体、専門家の力を結集したネットワーク(新しい公共)が考えられ、その基盤づくりが求められる。そうした問題意識の下、平成24年12月に設立された一般社団法人「東北圏地域づくりコンソーシアム(以下、東北こんそ)」に注目している。東北こんそでは、各地のまちづくり協議会に寄り添ってサポートする「復興まちづくり推進員」を派遣する事業がある。復興まちづくり推進員は、分散した地域住民をつなぎ、話し合いをサポートし、必要に応じて専門家をつなぐなどの役割を見出している。今後は、新しいコミュニティ形成のための活動支援が想定されている。こうした人的支援の重要性にも着目し調査研究を続けていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は「実証的研究」と「事例研究」の二本柱で構成している。実証的研究では、地区別復興まちづくり計画の策定、復興まちづくり推進員(以下、推進員)の役割構築、中間支援組織の検討・設置等のプロセスを取り扱っている。被災地では、集団移転先の造成工事がH24年度後半から着手しはじめている状況であるため、住民にとっては空間のイメージが形成されにくく、復興まちづくり計画の策定とその合意形成に困難性を抱えている。こうした厳しい状況ではあるが、復興まちづくり協議会が設立され、その後は移転先の土地利用計画(ゾーニング)の検討、宅地決めのルールを中心に話し合いが続いている。こうした住民の献身的な活動を下支えする南三陸町、東松島市、山元町の推進員の活動についても観測してきた。さらに推進員を後方支援する東北こんそにも研究代表者が設立メンバーと関与しながら展開を見守っている。平成24年度は、こうした住民や推進員、中間支援組織の動向や役割について集中的に情報収集と整理分析を行うことができた。 事例研究では、岩手県、福島県等の被災地の動向調査や神戸、中越等の先進事例について専門家ヒアリング等を実施し、得られた成果を速やかに実証的研究へ還元していくことに心がけた。視察については、当初予定していた神戸や中越の視察を奥尻島に変更したが、東日本大震災の復興に活かせる貴重な知見を得ることができた。また年間を通じて、多くの専門家から復興の情報や本研究に対しての指導助言をいただくことができた。研究の成果については、日本建築学会、都市計画学会、コミュニティ政策学会等に報告を投稿することができた。 本研究計画では、復興の進展について見通しが弱かった点が反省されるが、現場との関わりの中から予定していた研究成果を得ることができた点を自己評価し、概ね順調に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度も引き続き、実践的研究、事例研究をセットで行い、調査結果をその都度取りまとめ、学会等で発表していく。 各地の復興まちづくり協議会では、移転先の街並み、公園、道路、住まいのあり方等について検討していくことと想定している。かなり時間や情報の制約がある中で、復興まちづくり計画がどう検討され、形づくられていくのかについて注目していきたい。また、山元町をはじめ一部の地域では災害公営住宅の整備が進み、入居が始まったところもある。先行して移転先に住む住民のコミュニティ形成をどう図っていくかについても研究として扱っていく予定である。並行して、復興まちづくり推進員、東北こんその展開にも実践的に関わり、中間支援組織の事業コンテンツや体制のあり方について研究を深めていきたい。 研究代表者は、被災地に立地する大学に所属しているために、自身の研究については当面被災地が主たる対象となる。少子高齢化と過疎化が進展すると想定される被災地から得られる研究の成果を、全国の過疎地域に還元していくことも視野に入れて、今後も被災自治体や活動団体と連携を育み、かつ現場の動きに身を置きながら研究を継続していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
実践的研究では、被災地への旅費、資料の整理等の研究補助、専門家との情報交換会や研究会への参加で予算の使用を見込んでいる。事例研究では、先進地として神戸や雲然の視察を計画している。研究環境を向上していくために、研究用PCの購入と研究図書の充実を図っていく。
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