研究課題/領域番号 |
24560750
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝男 宮城大学, 事業構想学部, 助教 (80448620)
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キーワード | 東日本大震災 / 復興まちづくり / 住民主体 / 協働 / 人的支援 / 地域コミュニティ |
研究概要 |
被災地では震災経過から2年目を向かえるが、集団移転先の造成工事が完了に漕ぎ着けたところは少なく仮設住宅の使用期限が延期されている。重点的に調査している東松島市と山元町の場合だと、復興まちづくり協議会での話し合いは宅地決めの方法、街並みのルールなどを検討する段階に留まっており、移転先内の学校や市民センター等の公共施設、JR駅、商店等のあり方検討にはまだ至っていない。地区別復興まちづくり計画の策定も進行中の地域が殆どであり、いまだ内容が流動的であるが、計画策定のプロセスについて分析を加えている。 復興まちづくり推進員の役割については、住民間で届く情報量に格差が生じ、誤解・混乱が生じており、地区懇談会を開くなど、丁寧な住民への情報提供と共有を満たしていくことが重要であると確認できた。また、住民同士のつなぎ、行政への住民意向のつなぎ、子供や子育て世代等、次世代のまちづくり担い手の育成などのニーズも推進員の役割として浮き彫りになった。 山元町では、宮城県内の先陣を切って災害公営住宅の第一期が提供され、一部住民が新市街地に入居をはじめている。抽選で決まった住民らで構成する新しい自治組織の立ち上げ、高齢者の多い住民構成により集会所等の共有スペースの管理運営、新たなコミュニティ形成に向けての課題についても集約につとめている。 コミュニティ再生の中間支援組織については、みやぎ連携復興センター(宮城県全域)、釜援隊(釜石市)、東北圏地域づくりコンソーシアム(宮城県全域)についてヒアリングを実施し、支援コンテンツを収集した。その他、復興関連催し参加、事例調査、専門家ヒアリングを通じて事例や情報を収集することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は実証研究と事例研究の二本立てで構成している。実証研究では、研究代表者本人も関わる復興まちづくり協議会とその活動を支援する復興まちづくり推進員の活動の観測を通じて、コミュニティ再生を住民が主体的に担っいくための支援のあり方について考察している。研究の対象としては被災地全域としており、その中で東松島市、山元町、南三陸町、名取市の動向を重点的に調査をおり現地踏査を頻繁に重ねている。とくに東松島市においては、東矢本駅北地区まちづくり整備協議会、野蒜北部丘陵地の高台移転部会の話し合いについて参加し、内容とその変化(プロセス)、住民・行政・コンサルタント、支援者の役割などについて研究を深めることができた。 事例研究においては、過去の被災地復興の情報、復興まちづくりに有効と判断した地域づくりの事例を踏査、地域づくりシンポジウムや報告会などの参加を通じて広く収集している。中間支援組織については、みやぎ連携復興センター(宮城県全域)、釜援隊(釜石市)、東北圏地域づくりコンソーシアム(宮城県全域)の存在を注目しており、今後は、住民主体のコミュニティ形成を促進していくための、層的な支援制度のあり方にも言及していきたい。 少子高齢化、人口減少をはじめ、移転先の人口構成が大きく変化することが想定されている。被災地に限らず、限界集落が増加する農山漁村地域と類似する地域状況が多々見られることから、本研究を通じて被災地の復興から得られる知見を、持続的な地域経営とそれを実現するための行動を示す地域計画論のあり方についても言及していきたい。 本研究の成果は、学会や機関誌等のレポート、あるいは復興関係の催しで発表し広く社会発信につとめている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度も継続して、実践研究と事例研究を続けていき、研究成果を学会等で発表していくものとする。防災集団移転促進事業や災害公営住宅事業は、本研究計画で設定した想定より移転先の宅地提供が遅めとなっているため、地区別復興まちづくり計画の策定も進行中の地域が殆どで、その内容は流動的である。そのため、地域別復興まちづくり計画の内容を比較分析することが難しい状況であり研究を進める上で課題となっているが、現場に密着した丁寧な情報収集とその分析に心がけたい。 徐々に入居が開始されている災害公営住宅団地の孤立化を防ぐためには、周辺の受入地域の住民を巻き込んだ関係づくりが大事になる。被災地の多くは農村部であり、市民活動団体やNPO等の支援組織が少ないため、社会福祉協議会、福祉事業所、自治組織な、行政の協働によるまちづくりによる新しいコミュニティづくりが求められており、本研究でもそのあり方についての考察を深めていきた。 住まいの再建だけでなく、生業の復興についても被災者の関心が高く、復興まちづくり協議会で検討する機会も増えてきた。津波浸水区域(災害危険区域)の利用についても、研究課題に加えて、その動向を見守っていきたい。 研究成果は、随時、論文投稿や学会誌寄稿などを通じて社会還元に務める。
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