研究課題/領域番号 |
24560760
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
高橋 儀平 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (60058162)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本・中国・韓国 / バリアフリー法 / 基準の共通化 / 都市施設 / 建築物 / サイン |
研究概要 |
本研究は、東アジア地域の社会経済活動がグローバル化する流れの中で、特に日本、中国、韓国における都市環境、建築物のバリアフリー化の情勢を踏まえて、少なくとも日本、中国、韓国の中で共通化すべき建築物、都市環境のバリアフリー標準を考究することを目的としている。研究方法はおおむね順調ではあるが、平成24年度に社会状況の変化もあり、中国、韓国の現地調査が滞った。以下平成24年度の研究実績の概要である。 日本で2011年度から進められてきたバリアフリー法の施行状況見直し検討会(国交省)に参加し、バリアフリー移動等円滑化基準の見直しに伴うガイドライン協議結果をもとに課題を整理した。特に建築物設計標準での車いす使用者用トイレの整備手法の変更や駐車場整備の考え方、視聴覚サインについて問題を整理した。韓国では韓国障碍者開発院にて韓国バリアフリー法制度・技術基準の改訂状況、優れた都市、建築物を対象とした認証評価施設の実態を把握した。結果的に韓国ではガイドラインの質が向上しており、施設整備の水準が高まっている。しかしながら、都市環境や個々の施設部位の整備では設計、施工水準にやや不明瞭な部分が見受かられる。 中国の情報収集については、当初現地調査を予定してはいたが、社会情勢の変化により次年度に延期し、研究代表者が所属する機関の留学生からの現地調査報告、意見交換、およびインターネットによる文献収集・翻訳活動を行った。その結果、各種バリアフリー通達が政府機関によって行われ、さらに進展している様子を把握し、一方で、建築主、事業者、市民理解の遅れがバリアフリー化の問題となっていることが判明した。 また、国際標準化の動きは重要とみなし、特に2011年12月の建築物の最終基準版を中心に、アジアへの適用の可能性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の申請額に対して、支出額が予定より下回ったが、これは中国の社会情勢の一時的な変化により、現地調査(旅費)を延期したためである。その他物品費はほとんど調達しなかったが、24年度時点では研究遂行に大きく影響していない。
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今後の研究の推進方策 |
研究準備段階及び平成24年度の研究経過により、日本、中国、韓国のバリアフリー法の共通部分と相違点、特に具体的な詳細設計の違いが明らかになっている。これは既存の都市施設、建築物整備の歴史的差異の他に、バリアフリー化を促す方法、部品、設備機器の開発問題がある。今後は各国のバリアフリー法制度および技術基準をさらに比較分析しながら、技術基準と設計手法の共通化の課題を検討する。 共通化の可能性を検討するためには、共通化できない社会的、技術的要因、背景を丹念に分析する必要がある。次年度以降さらに現地調査や文献調査を踏まえて、今後の東アジアの観光、就労、教育各分野のグローバル化に備えたバリアフリー化の共通の方向性を研究課題とする。日本、中国、韓国の3カ国は東アジア地域の指導的立場にあり、社会経済情勢を踏まえた、バリアフリー水準の発展は、欧米諸国、中東アジアに与える影響が少なくないと思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度では、まず平成24年度で実現できなかった中国建築設計院、その他の研究機関への訪問調査を実現する。また、中国各都市のバリアフリー化は政府の方針があるものの、地域によりその進展状況が異なるので、他の都市も現地調査予定である。韓国では引き続き関係機関との調整を行って現地(ソウル以外も施設調査予定)での研究交流を進める、これらの海外旅費が発生する。また、2国以外のアジア地域(香港、台湾、シンガポールなど)の先進情報が必要になるとも考えられ、これら地域への調査(インターネット調査含む)を検討している。各国研究機関との連絡は確保されており、計画通りと考えてる。日本では引き続き、国交省を始め専門家との討論の場を設け、法基準の見直し提言と、技術基準の共通化のための課題を整理する。これらの作業に若干の国内旅費等が発生する。人件費・謝金では、中国語、ハングル、英文和訳等の人件費、現地調査に伴うコーディネート(通訳)費が発生する。そのほか消耗品の使途を予定している。なお、昨年度の残金247,245円については、中国国内の現地調査旅費、文献収集、文献翻訳費に充当する予定である。
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