本研究は、日本、中国、韓国でこの間急速に進展するバリアフリー化の動向を背景に、東アジア地域における日本型バリアフリー技術の適用をも視野に入れながら、日中韓におけるバリアフリー基準の標準化の可能性とその手法について諸課題を明らかにしたものである。平成26年度は本研究の最終年度であり過去3カ年の研究の取り纏めを行った。4月~9月には再度ソウル、北京両市で法基準の運用や施設調査を行い、12月には東洋大学において、両国からのバリアフリー専門家を招き「高度なユニバーサルデザインを目指した日中韓セミナー」を開催し研究活動の検証を行った。そこでは、両国の専門家から日本におけるきめ細かい整備対応や障害者を含む利用者参加のプロセスに共感が得られた。一方韓国では法に基づくバリアフリー認証制度や5年毎の全国バリアフリー悉皆調査、きめの細かいガイドライン作りなどで日本でも応用すべき知見が新たに得られた。 3カ年の研究成果として、東アジア地域におけるバリアフリー技術の標準化について検討を要する点が明らかになった。例えば、文化、都市施設の形成過程、バリアフリー法制の運用、障害者参加の仕組み等から標準化すべき対象を絞り込む必要があることである。その中で、視覚障害者誘導用ブロックの使用方法、歩車道環境、多機能トイレ、サイン環境などでは、日本型基準等を参考としつつ整備を進めていることが判明した。これらは優先的に標準化することが可能と思われる。さらに、韓国のバリアフリー認証制度や事後検証の仕組み(バリアフリー全国実態調査)、日本のバリアフリー基本構想などは、3カ国に有益な手法として認められる。他方、事業者、建設会社の法順守等は各国共通の課題ではあるが、各国の運用に委ねられるべきである。本研究により各国の法制度や整備基準の比較、運用の仕組みが明らかになり、専門家のネットワークが構築されたことは大きな成果である。
|