研究課題/領域番号 |
24560761
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岡田 智秀 日本大学, 理工学部, 准教授 (10307796)
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研究分担者 |
横内 憲久 日本大学, 理工学部, 教授 (30060172)
川田 佳子(押田佳子) 日本大学, 理工学部, 助教 (10465271)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | まちづくり / 海岸防災 / 海岸環境保全 / ハワイ州 / 東日本大震災 / セットバック |
研究概要 |
本研究目的は、海岸構造物に極力依存しない新たな海岸まちづくり方策を導くために、その先進事例である米国ハワイ州の「海岸線セットバックルール」の運用実態とともに国内事例分析を通じて、日本型海岸線セットバックルールのあり方を考究するものである。 初年度研究計画では、ハワイ州の調査を中心とし、次年度以降で日本国内の事例研究を行う予定であった。この点につき、ハワイ州の運用実態は後述する成果が得られ、さらには、巨大海岸構造物建設の是非が問われている東日本大震災被災地(福島県いわき市)において、セットバックルールに対する地元住民・行政の見解を問う機会に恵まれた。そのため24年度では、この復興まちづくりを国内事例として前倒し的に調査することとした。(1)ハワイ州調査結果―1)カウアイ市郡では、海岸線近傍のセットバックルールと、背後地の高潮・高波対策としての減災建築デザインルールについて、両者統合の取り組みが進められていた。これは海岸線と背後地を一体としたセットバックルール強化策として、日本でも参考すべき重要事項となる。2)現状問題として、オアフ島ラニカイ地区の海岸侵食が現地調査より捉えられ、海側に前出しした土地利用がハワイ州でも問題となっている実態が認識できた。3)当制度実施プロセスとして、SMA(Special Management Area)の申請が導入部となることが捉えられ、本制度を今後分析することは日本導入の制度的留意点が抽出できる。4)ハワイ島では過去の津波で集団高台移転を実行し、被災地区をメモリアルパークとして整備した事例を捉えた。これは東日本地域の復興モデルとして参考となろう。(2)国内事例調査では、巨大防潮堤建設を回避した江名地区の実現要因、巨大防潮堤の前出し案を回避した四倉地区の実現要因、津波被災地区の防護ラインをセットバックさせた久ノ浜地区の実現要因などを把握した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
24年度の研究計画で実施予定であった米国ハワイ州の海岸線セットバックルールの運用実態調査として、当制度を適用した住宅地の居住者ヒアリングがプライバシーの問題で実現が困難であったが、その他の項目はすべて予定通りに達成できた。その結果、上述したように、25年度にハワイ州で取り組むべき調査項目が具体化できた。 また、25年度に実施する予定にあった国内事例調査においては、当初は想定していなかった東日本大震災被災地(福島県いわき市)の調査・分析に24年度内に取り組むことができた。これは待ったなしの状況にある巨大防潮堤建設をめぐって海岸線セットバックルールがどこまで理解され、実行されるかを評価するたいへん貴重な調査になったといえ、これは25年度も継続して被災地の調査事例を増やしていく予定である。 以上より、初年度を終えた現段階では、当初の計画以上に進んでいるとの認識に至っている。 なお、そのほか本研究テーマ推進に関し特筆すべき点は、社会的反響の大きさであり、本研究テーマが「東京新聞朝刊」(2013年1月19日付)に掲載されたのをはじめ、「毎日新聞夕刊」(同3月7日付)、「東北放送特番テレビ番組生出演」(同3月11日付)、「東北放送テレビ取材録画放映」(同3月22日付)といった社会的実績もまた得ることができたことを付記しておきたい。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の海外先進事例調査では、上述したように、現地の新たな取り組み(当制度の改定)や特徴的な事例(集団移転と津波メモリアルパーク)とともに、法制度上(Special Management Area)の留意点などについて、さらに調査を進めていく必要性が明らかとなった。そこで25年度も引き続き米国ハワイ州の実態調査に取り組む所存である。その主たる調査項目としては、(1)セットバックルールの強化策として、現在改定中のカウアイ市郡のセットバックルールと減災建築デザインルールの融合化に着目し、改定完了時点で改定内容と有効性を考察。(2)日本型セットバックルール構築の制度的手がかりとして、セットバックルールの最初の導入プロセスとなるSMA(Special Management Area)の運用実態の明確化。(3)ハワイ島の津波被災地における集団高台移転と津波メモリアルパークの実施経緯と現状の実態等の把握。 また、国内事例調査は、幸いにして東日本大震災被災地と接点がもてたことと、その被災地の復興事業が待ったなしという現状にあることから、当初の国内事例(大分県、沖縄県)の調査よりも、この被災地を対象とした海岸線セットバックルール導入の評価を優先的に取り組むこととしたい。 なお、当初予定していた国内事例調査(大分県、沖縄県)についても、被災地調査のスケジュールと調整の上、着手する機会を見計らいたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.米国ハワイ州調査(オアフ島、ハワイ島、カウアイ島)=500,000円/2.東日本大震災被災地調査;ワークショップ形式(代表者+学生3名)と打合せ2回(日帰り)=100,000円、その打合せ2回=20,000円/3.国内沿岸域法制度分析(沖縄県海浜使用条例等)=90,000円/4.国内海岸環境調査(大分県中津等)=90、000円<合計> 800,000円 (※24年度の米国ハワイ州旅費550,000円は25年4月以降に支払予定)
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