研究実績の概要 |
平成26年度は、前年度に展開したスペイン・カタルーニャ州の「界隈法」(2004年から施行)の調査を継続し(Cardona, Vilanova i la Geltru;, Rubi;, Santa Coloma de Gramanet, Barcelonaの各自治体)、さらなるフィールド調査を重ね実態把握に努めるとともに、これまでのプログラム適用都市の分析を整理し、計画ツールとしての特徴と限界を考察した。各自治体で衰退の進む「特別に注意が必要な地区」(歴史的市街地、郊外の団地、無秩序に形成されたバラック市街地)では、地区内のスペースが駐車場化し、既存ストックは老朽化、商業活動も弱体化していた状況を踏まえ、界隈法を用いて主に地区内の交通動線の歩行者空間化、広場の修復、移民や単身高齢者が空間を共有できる施設の整備等が実施されている。バルセロナを例に取ると、地区施設や住宅が老朽化し、公共空間も活力を失っていた地区が対象に選定された。衰退地区には観光客が足を運ぶこともなく、単身高齢者や移民の集住地区としての性格を強めつつある。界隈法を用いて、公共空間の整備と社会的包摂プログラムを織り交ぜながら様々な界隈のニーズに丁寧に応答することで、地区住民の帰属意識や自負心を回復させ、生活の質を大幅に改善することを狙っている。都市再生先進都市であるがゆえに生じた、いわば再生後の亀裂や断層を修復していることが明らかとなった。
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