研究課題/領域番号 |
24560771
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
吉村 英祐 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50167011)
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研究分担者 |
木多 彩子 摂南大学, 理工学部, 教授 (90330357)
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キーワード | 犯罪不安 / 防犯 / 通学路 / 建物用途 / 建物内の見通し / 生活施設 / 街頭犯罪 / スペースシンタックス |
研究概要 |
1.建物の用途と犯罪不安箇所の関係性からの分析:平成24年度の成果をふまえて、通学路に面する建物の用途や街路からの建物内部の見通しの程度を調査し、通学路に面する建物が通学児童の保護者に与える犯罪不安への影響を調査した。調査対象地区は、大阪府下の二つの公立小学校校区である。調査結果は以下のとおりである。(1)地域施設が密集している箇所では犯罪不安を感じていない傾向がみられる。(2)両小学校区の通学路に面する建物の用途は、住宅・マンションが最も多く、次いで駐車場・空き地、物販施設である。(3)建物用途別にみた分布と犯罪不安箇所については、住宅・マンションが密集する入り組んだ街路上に犯罪不安を感じる傾向がみられるが、区画整理された街路上では、住宅マンションが密集する場所でも犯罪不安が指摘されていない。(4)公園は犯罪不安が集中する傾向がみられるが、周囲からの見通しがよい公園は、犯罪不安箇所として指摘されていない。(5)通学路に面する建物のうち、建物内部の見通しがよい地域施設は、保護者の犯罪不安を緩和させる要素であると推察できる。また、建物内部の見通しが悪い住宅やマンションは、保護者に犯罪不安を感じさせる要因となっているが、街路の幅員や直線距離など街路の見通しのよさが、犯罪不安を緩和させる可能性がある。 2.過疎地における高齢者の外出行動調査:高齢化率が高い過疎地である三重県津市美杉町の住民を対象に、日常利用施設、利用する理由、利用交通手段等のアンケート調査を実施し、近い将来に日常生活が困難になると予測されること、移動手段や生活支援サービスを充実させる必要があることを示した。 3.生活施設の立地と街路の連続性監視性からみた街頭犯罪を誘発する空間的要因の分析:生活施設の立地と街頭犯罪発生地点の関連性を考慮し、より効果的な防犯対策実現のための犯罪発生地点予測手法につながる基礎的資料を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.前年度アンケート結果の詳細分析(達成度100%): 調査データの分析を完了し、初期の成果を得た。 2.住宅地内の施設混在に対する住民の意識調査(達成度100%):調査対象地区の小学校、教育委員会、地域住民の協力を得て、昨年度の調査結果と比較可能な精度の高いデータが得られた。 3.街角施設の防犯資源としての活用の可能性の検討(達成度80%):建物内の見通しと犯罪不安箇所の関係性を分析したが、見通し以外の要因の分析が未完である。 4.生活施設の防犯資源としての側面の検討(達成度90%) 「小学校」「公園」「コンビニ」「スーパー」「銀行」の生活施設の立地からみた街頭犯罪発生地点の特徴、およびスペースシンタックスのアクシャルマップを用いて、地図上のオープンスペースの接続関係から歩行空間の見通しと犯罪発生の関係を明らかにしたが、さらに詳細な分析が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、下記の調査を予定している。1.街角施設の防犯資源としての有効性の検証とその活用方法 2.利便性と防犯安全性を同時に満たす街角施設の適正配置 3.研究のまとめ(地域での基本的生活を支える生活関連施設、縮小社会でのまちづくりの理念としてのコンパクトシティ論との関連性・整合性) 上記を計画通り実施するため、昨年度同様、以下の点をふまえて研究を推進する。(1) 研究分担者との緊密な協力 (2) 大学院生を研究協力者にした効率的な研究体制の整備 (3) 引き続き地域との信頼関係の向上 (4) 過疎地における買い物環境の調査 (5) 生活施設の立地による犯罪抑制効果の検証
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は予定通り研究が進んだため、実支出額は当該年度の交付決定額110万円を上回ったが、24年度からの繰り越し額が大きかったため、次年度使用額が発生した。 最終年度は、以下の大きな支出が見込まれるため、次年度使用額もすべて消化できる予定である。(1) 防犯環境設計を採り入れた住宅地、買い物困難地区の調査が十分に行えていないため、当初の予定通り調査を行うための調査旅費、25年度に実施した調査の補足調査を予定しており、その旅費が発生する。 (2) 最終年度は日本建築学会論文集に複数の論文を投稿予定であり、その投稿・掲載料が発生する。 (3) 研究成果を印刷・製本する費用が発生する。
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