研究課題/領域番号 |
24560773
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
木多 彩子 摂南大学, 理工学部, 教授 (90330357)
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研究分担者 |
阪田 弘一 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (30252597)
飯田 匡 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40335378)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 建築企画 / 用途変更 / 課題解決プロセス / 先駆的価値意識 |
研究概要 |
1.本研究の一つ目の目的は、本研究チームの所属する日本建築学会建築企画小委員会のこれまでの活動を通じて、建築企画段階と建設当時に関する調査を行った既存事例を基に、改めて事業発案時から現在に至るまでの資料を幅広く収集し、「価値のとらえ方と管理」および「事前不確定的課題の解決プロセス」の2視点から、各研究者の専門分野に基づく考察により整理することである。 平成24年度は研究体制の確立のために、研究代表者と研究分担者で議論を重ね研究の方向性と調査対象事例の絞り込みによる原案を作成し、企業に所属する6名の研究協力者を含めた3回の会合でそれらを検討、精査した。その後、具体的な数事例に対して、現在に至る資料収集と、事業発案時から現在までの事業プロセスを概観できる関係者、あるいはターニングポイントとなった時点に深く関与していた関係者にヒアリング調査を行い、価値意識の変遷と課題解決プロセスについての知見の更新と蓄積を行っている。 2.本研究の二つめの目的は、「貨幣的価値のみに依存しない先駆的価値意識による事例」と「長寿命化に対応した用途変更過程の追跡事例」から、我が国ではまだ数が少ない先駆的事例の課題を探ることである。 平成24年度の研究体制は、各研究者がそれぞれの専門分野とフィールドにおいて調査分析を進めた。「先駆的価値意識の事例」では、研究対象を絞り込むための文献調査を行い、その結果、本研究では一定の外部評価を得ており事業の成功事例と考えられるCSR評価機関によって高い評価を得られている企業のCSR活動群の中の建築関連事業を研究対象とすることが相応しいと判断した。「用途変更の追跡事例」では、築35年の木造戸建住宅を障がい者デイサービス施設にリノベーションした事例の設計プロセスの分析から、住宅を福祉施設に転用する際に生じる様々な課題を明らかにし、成果を平成25年度に日本建築学会で発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、「建築の価値管理」や「予測不能事態における課題解決」に対する企業の意思の実態を解明する側面を持ち、企業経営方針や企業理念に関わる調査内容となるので、守秘義務の観点から研究協力への了承を得ることに、今年度は多くの時間を費やした。また、調査対象事例は比較的新しいものでも事業発案時から10年が経過しており、多くは現在に至る20年程度のタイムスパンとなるため、ヒアリング調査を予定していた事業発案時からの課題快活プロセスを概観てきる関係者を特定しにくいことが、研究を進める中で明らかになってきた。 従って平成25年度以降は、企業に対する調査を実施する際には、今年度の実績をもってより丁寧な交渉を重ね柔軟な対応を行い、並行して建物の価値意識に対する先駆的事例の収集と事業性の検証に着手していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、24年度に引き続き選定した既存の調査対象事例において、事業発案時から現在に至る「価値のとらえ方と管理」および「事前不確定的課題の解決プロセス」の2視点からの調査分析を行い、まとまった情報の整理手法を検討する。 建物の価値意識に対する先駆的取組事例の収集と事業性の検証および課題の抽出については、平成24年度には各研究者が個別に研究に取り組み、研究チームとしての活動が十分とは言い難かったので、平成25年度は研究体制の見直しを行い、研究チームとして積極的に着手していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査内容をできるだけ的確に把握し、研究チーム3名の共通の視点と専門分野に基づく視点からの考察を行うため、可能な限り調査には3名で現場に足を運ぶ。また平成24年度にえた研究成果の発表と関連する研究者との意見交換を積極的に行う。そのためには平成25年度も引き続き、各研究者に旅費が必要となる。 また、情報収集のための文献資料費や、ヒアリング調査を中心に研究を進めるための謝金、調査で得る守秘義務を伴う情報を管理するための機器拡充費が、調査を遂行する上で必要となる。 これらを平成25年度に使用する予定である。
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