研究課題/領域番号 |
24560774
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
糟谷 佐紀 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 准教授 (90411876)
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研究分担者 |
室崎 千重 奈良女子大学, その他部局等, 講師 (60426541)
平山 洋介 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (70212173)
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キーワード | 東日本大震災 / 応急仮設住宅 / 被災要援護者 / 障害者 |
研究概要 |
1.研究の目的:本研究の目的は、被災要援護者の住環境に着目し、避難所や仮設住宅での問題点を明らかにし、安全で快適な避難所、応急仮設住宅の仕様提案を行うことである。 2.今年度調査の概要:2つの調査を行った。1つは東日本大震災の応急仮設住宅に暮らす被災障害者へのヒアリング調査、もう1つは、奈良県十津川村の水害被災者のために建設された木造仮設住宅における住環境の検証調査である。 3.被災障害者への調査:昨年の調査に加え、新たに6世帯の被災障害者に調査することができた。その中の1世帯は、仮設住宅での生活に耐えられず、元の土地の都市計画決定前に公的支援を受けずに自宅を再建した。それ以外の世帯は、仮設住宅での生活を行っている。障害者優先枠で公営住宅に申し込むが当たらない、透析が必要なため交通の利便性の高い住宅にしか住めないなど、3年を経過し被災障害者の状況に変化がみられる。被災障害者の住宅条件は、障害に大きく影響している。 4.木造仮設住宅での調査:十津川村では、復興公営住宅の建設が完了し、木造仮設住宅の解体が決定した。そのため、手すりを取り付けや、車椅子での移動などにより傷がついても良いという県の許可を得て、空間検証を行った。車椅子使用者、杖使用者の協力を得て、住戸内、特に水回りの開口幅や段差、扉の仕様や手すり位置などの検証を行った。浴室内外の段差がネックで自宅浴室の使用を断念したという東日本の仮設住宅と異なり、木造仮設住宅は浴室内外の段差は無かった。そのため、トイレと脱衣室を1室とすれば(扉の付け替え、壁の撤去など)、単身、もしくは夫婦のみの世帯であれば、車椅子使用者、要介護者が無理なく利用できる水回り空間となる可能性を確認した。災害救助法により、仮設住宅の間取りや仕様はほぼ共通であるため、十津川村で検証したことは、今後の災害時の仮設住宅建設時の参考データとできる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災の被災地で建設された応急仮設住宅の住環境に関する課題を、昨年度と今年度のヒアリング調査の内容から整理した。2DKタイプの住戸には、縦に3つの居室の並ぶプランがあった。中央の居室は居室間の通路となるために非常に使いにくく、窓が無いため昼間でも薄暗い。また、このプランには脱衣スペースが無く、台所で脱衣し浴室に入ることになる。このタイプは、障害の有無に関わらず居住環境として、多くの課題を抱えている。それ以外のプランは、ほぼ同様の田の字型プランであるが、水回りのプランや仕様をいくつかのパターンに分けることができた。それぞれのメリット・デメリットを、段差の有無、福祉用具利用時や介助者スペースの確保などの視点で整理した。 それらを踏まえて、木造仮設住宅において空間検証を行うことができた。福祉用具を利用する、手すりを追加で取り付けるという簡易な住環境整備から、扉の付け替え、壁の撤去など大掛かりな工事を行うことで、利用できる人の範囲が拡大することを確認できた。 今年度は、これらの研究成果を学会発表、論文発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、本年度に行ったヒアリング調査の内容をさらに分析し、応急仮設住宅に暮らす被災障害者の生活実態をまとめ、論文として発表する予定である。 被災障害者へのヒアリング調査は、引き続き行う。公営住宅への申し込み、入居、仮設住宅団地の集約など、これから被災地で様々な変化が起こることが予想される。今後の住宅選択に対して、障害者の持つ条件が与える影響を把握していく。 復興公営住宅建設の進捗はかなり遅れており、多くの被災者が長期間の仮設住宅での生活を強いられている。 研究の目的として恒久住宅(復興公営住宅や自立建設)へ移り住んだ障害者への調査を行うことをあげているが、2014年度末においても1割程度の公営住宅しか完成しない状況を見ると、これらの調査は難しいと考える。 研究の最終年度として、自治体へのヒアリング調査や、すでに入居が完了した公営住宅の居住者への調査を計画する。調査対象者を探し当てることは非常に難しいが、様々なネットワークを通じて、少人数でも良いので調査に協力していただける障害者を引き続き探す。
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次年度の研究費の使用計画 |
2014年3月末に調査を行うこととなり、レンタカー代やガソリン代など不確定なものが多かったため。 次年度も、現地での調査にかかる交通費、宿泊費、レンタカー費が、研究費の8割を占めることになる。調査計画を早く立て、安い航空券を取得するよう努力する。
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