研究課題/領域番号 |
24560779
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本社会事業大学 |
研究代表者 |
井上 由起子 日本社会事業大学, その他の研究科, 准教授 (40370952)
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研究分担者 |
矢田 尚子 日本大学, 法学部, 准教授 (40383195)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | サービス付き高齢者向け住宅 / 状況把握と安否確認 / サービス付帯 / 家賃補助 / 低所得者 |
研究概要 |
サービス付き高齢者向け住宅の適切な普及ならびに居住の安定化を目的に、2012年度は以下の調査を実施した。 調査1.サービス付帯についての全国悉皆調査を行い、安否確認と状況把握を担うスタッフと介護(通所、訪問、小規模多機能、定期巡回随時対応型訪問介護看護)の組み合わせと連携体制を把握した。その結果、当該住宅は、介護を必要とする中間所得層の住宅として位置づいていると判断できた。施設系サービスに比べると、対象者像は幅広く、要支援レベルからも入居していた。要介護4・5が一定程度いること、退去経路で死亡が1/4を占めることから、終の棲家として機能している実態も把握できた。平行して、事例調査を行い、居住機能と拠点機能の複合連携における留意点を抽出した。 調査2.賃貸借契約ならびにサービス契約の法的課題を明らかにするために、調査1と並行して重要事項説明書を収集し、その内容を分析した。その結果、当該住宅における契約書は、国土交通省・厚生労働省が公表している「参考とすべき入居契約書」に沿ったものが、高専賃のときと比較して増加していることが明らかとなった。生活支援サービス契約書も、東京都が公表している契約書に沿ったものが多く、契約書の体裁等については問題のある契約書はほぼなくなったといえる。 調査3.事業者の安定経営と利用者の支払い能力の両立に向けた課題の抽出を目的に、オーストラリアの高齢者住宅事業の概要を把握したうえで、この事業への普遍的な家賃補助制度の適用状況について、文献調査を踏まえたうえで現地にてヒアリング調査を実施した。その結果、普遍的な家賃補助制度、中古住宅の流通市場の確立、移民による世帯数の増加などを背景に、比較的、高齢者住宅への転居がスムーズに行われているものの、持家を取得していない低所得者向けの高齢者住宅の開発が課題であることが把握できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、以下の3つの調査を実施予定であった。 調査1.地域包括ケアを前提とした居住機能と拠点機能の複合連携のあり方 調査2.賃貸借契約ならびにサービス契約の法的側面の課題 調査3.事業者の安定経営と利用者の支払い能力の両立に向けた課題の抽出 このうち、調査1については全国悉皆調査に加えて、事例抽出を行うなど前倒しで調査を行うことができた。調査2については予定どうりに遂行した。ただし、諸外国に関する調査については、当初の想定以上に、サービス付き高齢者向け住宅の契約書や、有料老人ホームに関する契約書等の資料が多数集まったことで、その分析について多くの時間と費用がかかったため、次年度に見送ることとした。調査3については、調査予定事例に対して事前調査を行った結果、サービス付帯ではなく住宅提供そのものに力点がおかれている事例であることが判明し、詳細調査を見送ることとした。諸外国の調査については、文献調査の結果、日本と同様に持家政策であり、なおかつ高齢者住宅の普及に着手しているオーストラリアに対象を変更することとし、現地にて普遍的家賃補助制度の適用状況を把握した。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、調査1の結果を踏まえて、地域包括ケア時代における高齢期の住まいに関する書籍の出版を予定している。これに向けて事例調査を重ねるとともに、文献調査を踏まえて安寧な住まいについての概念整理を行う。調査2については調査2については、平成24年度に収集できた資料のうち、契約書以外の資料も多数あったことから、本年度は、その分析を行うと同時に、個別条項についても検討を進めていく。その一方で、私法上の制度として我が国における法制度に最も類似した制度をもつ参考となりうるドイツについて、近年、数多く出版されているホーム法改正後の高齢者向け住宅の法律制度に関する文献調査を行いつつ、現地において実態把握を行う。調査3については、文献調査によってオランダ、カナダ、スウェーデンの実態把握を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
文献調査、収集した契約書と重要事項説明書の分析、ドイツにおける契約上の実態把握、国内外の事例調査を実施するために研究費を使用する。
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