研究課題/領域番号 |
24560782
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 広英 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (70346097)
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研究分担者 |
藤枝 絢子 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (60598390)
ニーフ アンドレアス 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (60618297)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フィジー / 伝統木造建築 / 文化継承 / 地域資源 |
研究概要 |
【研究の目的】本調査研究は、ブレと呼ばれるフィジー共和国の伝統木造建築に着目し、将来社会における持続可能性を探るものである。現代の近代化・西洋化が浸透する社会コンテクストにおいて、いかに地域固有の文化が継承可能であるか、ブレを有する調査対象集落の事例よりその成立要因を見ていく。伝統木造建築の維持存続には、地域社会で保全される知的資源(建築技術)、人的資源(コミュニティ)、物的資源(建築材料)という3つの地域資源の活用として整理することができる。フィールド調査により、これら各資源の変容状況と各々の連環関係の強度を把握し評価する。得られた研究成果は、フィジー建築文化の貴重な資料になるだけでなく、今後の発展的継承に向けた具体的かつ実践的な方策に役立つものとなる。常襲的な台風災害を受け300島以上を有する島嶼国フィジーでは、早期の離島支援が困難なため自力復興が基本的に要請される。そのため、住宅復旧で現地資材を利用する伝統木造建築が見直されつつある。特に2010年のサイクロン・トーマスでは住宅被害が大きく、新建材により建設された多数の離島住居へ建材供給が遅れたことが教訓にあり、この点で伝統木造建築の現代的意義をもつ可能性がある。 【研究実績の概要】情報収集と調査準備に関しては、調査対象集落に関する航空写真、地図等の基礎資料入手、衛生写真に基づくベースマップ作成、ビティレブ島内集落の広域踏査を実施した。特にナバラ村でのフィールド調査では、建築形態、生活様態、住居配置等の一般的な集落理解に努め、次年度の詳細調査に必要な資料収集を実施した。また、研究の背景にもなる伝統木造建築の現代的意義について、フィジーの自然災害との関連から論文2報(内1報は査読付)をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の実施計画項目に則して研究の進捗状況を以下に記す。 【情報収集と調査準備】文献収集、地図情報等は概ね収集できたたため、次年度以降は現地フィールド調査を中心に展開する。 【CATDで建設されたブレの追跡調査】これまでの本調査、補足調査をもとに知的資源となる在来建築技術に関して論文にまとめる準備をしている。自然資源、人的資源については継続的に次年度以降のフィールド調査により把握する予定である。 【調査対象集落におけるフィールド調査】今年度は広域踏査を実施し、研究計画に沿った2村の選定として、詳細調査が可能で研究目的に適したナバラ村とザウタタ村とした。特に入村機会のなかったナバラ村では滞在調査を実施し基礎的情報の収集に努めた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の広域踏査で得られた情報から、詳細調査が可能なナバラ村、及びザウタタ村を中心にフィールド調査を展開する。各集落の特徴から、下記の項目に焦点を当て地域文化継承の成立要因とその持続可能性について考察する。 【ナバラ村】伝統木造建築で構成されたナバラ村の地域資源管理の状況、伝統木造建築の維持継承のメカニズムをフィールド調査により解明する。 【ザウタタ村】在来建築技術を習得した若年世代による地域文化継承の可能性をグリーンツーリズムとの関連から考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度フィールド調査の渡航滞在費として予定していた一部経費を繰り越したため、次年度研究費と合わせて同目的のフィールド調査費用として集中的に現地での情報収集を実施する。
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