本研究は日本におけるアーツ・アンド・クラフツ運動(A&C運動と略)の受容を武田五一という建築家を通じて考察することであった。イギリスでの幅広い運動の全貌を把握することにより、並行して検討した武田の活動への影響を指摘し、解明した。従来、日本でのA&C運動の影響はその理念の受容を中心に検討しているが、実際の作品や様々な活動、理論的展開を比較することにより、日本の工芸、住宅・室内意匠等への影響が明らかとなった。さらにウィーン分離派を始めとする新しい運動もその源泉をA&C運動に求める史観も確認され、J.コンドルに遡る広範なゴシック復興運動からの影響を含めて今後検討する必要があることが明らかとなった。
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