研究課題/領域番号 |
24560785
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
谷 直樹 大阪市立大学, 生活科学研究科, 教授 (40159025)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 近世建築史 / 大工頭 / 中井家 / 大工頭中井家関係資料 / 指図 / 公儀作事 / 城作事 |
研究概要 |
大工頭中井家は、江戸時代に五畿内・近江6カ国の大工を支配し、同国内における公儀造営の設計・施工を家職としており、その研究は近世建築史の重要なテーマである。本研究では中井家所蔵資料(中井正知氏蔵)7,567点(内5,195点が「大工頭中井家関係資料」として国指定重要文化財)をもとに、中井家歴代の事績をまとめた『新・中井家系譜』を編纂し、近世における上方の建築界の全体像を提示することを目的としている。併せて、未公開の中井家所蔵資料の公開環境を整備し、中井家研究の総合的な発展に寄与したい。 【A】中井家所蔵資料の公開環境の整備;平成24年度は、指図・絵図類の写真プリントを作成した。また、大阪市立住まいのミュージアムで企画展として開催された「大坂の陣と大坂城・四天王寺・住吉大社の建築展」「中井家伝来茶室起こし絵図展」の担当・監修をした。 【B】中井家歴代の事績をまとめた『新・中井家系譜』の編纂;中井家文書を基礎資料とし、当時の一次資料を渉猟して、歴代当主の事績、御用作事の様子、配下の棟梁衆の仕事、6か国大工組の動向などを考察するため、関係文書の読みと現代語訳を作成した。 具体的に見ると、①「中井家の草創期(慶長期)」では、初代・中井正清(1565~1619)が活躍した慶長年間における城郭作事資料をまとめた。②中井家の拡充期(元和~慶安期)では、2代・中井正侶(1600~1631)を取り上げ、大坂城や二条城の造営に関する資料を検討した。正侶は若死したため、2代の後見人に立った中井利次(正清の従弟・1580~1626)、3代の後見人であった中井正純(正清の弟・1594~1654)の存在に注目し、彼ら事績を再評価した。③中井家の転換期(承応~宝永期)では、3代・中井正知(1631~1715)を取り上げ、その業績を整理し、さらに茶人としての活動、茶室関係の史料を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【A】中井家所蔵資料の公開 平成24年度は、指図・絵図類の写真プリント(カラー)は予定通り作成したが、所有者の承諾が取れなかったので、ラベルの貼付は未実施である。また、大阪市立住まいのミュージアムにおいて、企画展として「大坂の陣と大坂城・四天王寺・住吉大社の建築」「中井家伝来茶室起こし絵図」を開催し、資料を一般公開した。 【B】中井家歴代の事績をまとめた『新・中井家系譜』の編纂 中井家所蔵資料から関係文書の読みと現代語の訳文を作成したが、当時の一次資料(棟札、日記類、記録類、『徳川実記』など)との照合は、時間の制約もあって課題として残った。また、③中井家の転換期(承応~宝永期)の資料検索は、茶室関係の資料は網羅したが、内裏作事(承応・寛文・延宝・宝永度)や社寺作事の関連資料の収集も時間の制約で課題として残った。 これらの総括から「やや遅れている」との自己評価を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
課題【A】「中井家所蔵資料の公開」については、今年度の実績を踏まえると、写真プリントの作成(期間・費用)が大きな比率を占めることになる。そのため、早期に写真作成を進め、後半で課題【B】「中井家歴代の事績をまとめた『新・中井家系譜』の編纂」のための資料検索を行いたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本科研は、【A】中井家所蔵資料の公開と【B】中井家歴代の事績をまとめた『新・中井家系譜』の編纂の2本柱から成る。以下に、次年度(平成25年度)の計画を記す。 【A】中井家所蔵資料の公開:中井家所蔵資料のうち、近世の文書・記録類の写真プリント(モノクロ)を作成し、公開環境を整える。 【B】中井家歴代の事績をまとめた『新・中井家系譜』の編纂:前年度に引き続き「中井家の転換期」の資料整理を進め、今年度はこれに加えて新たに「中井役所の時代」の考察を進める。中井役所の時代は、中井役所成立後の18世紀から19世紀初頭にかけての当主(4代・正豊~8代・正平)の事績である。この時代は、享保の改革以後の緊縮財政によって、公儀作事は維持管理中心に転換され、中井役所もそれに対応した規模に縮小されたが、一方では寛政度内裏のような大きな仕事を担当しており、中井家には膨大な資料群がある。
|