研究課題/領域番号 |
24560790
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
伊藤 裕久 東京理科大学, 工学部, 教授 (20183006)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 日本統治期 / 都市空間 / 居住形態 / 台湾 / 韓国 / 日本 |
研究概要 |
本研究では、日本統治期の台湾・韓国・日本における近代都市空間を比較する上で、一般住民の生活の場となった商業街・市場や宗教・祭祀空間などを積極的に分析対象とすることで、伝統から近代への変容という連続的な視角をもちながら都市空間や居住形態の特質に迫ることを目的としている。 平成24年度は、台湾において「台湾総督府公文類纂」等の史資料を収集すると同時に、これまで調査研究を進めてきた新竹・台中・嘉義・北港などを調査対象として、現地での都市・建築調査(街区・街路構成、街並景観、建築遺構、地域コミュニティ、市場・寺廟空間など)を実施した。その結果、特筆すべき研究成果として、1)媽祖廟の総本山的な宗教都市である北港において、寺廟を中核とする日本の門前町に類似した整然とした都市空間構造が、日本統治期における嘉義大震災後の都市改造(ロータリーの建設による境内空間の拡張、廟前への公設市場の建設、参道の拡張と連続的な街並景観の形成)によって創出されたことを具体的に解明できたこと。2)日本統治期における台中・嘉義のグリッド状街路・街区計画と街並景観の形成過程および地域的差異を具体的に解明し、日本住宅の影響を受けた近代における台湾街屋の空間的特徴の一端を抽出できたこと。3)清代の城壁都市で知られる新竹・宜蘭・嘉義における公設市場と街区形成の共通性と相違点が解明できたことなどがあり、これらの研究成果をついて、平成24年度の日本建築学会大会および関東支部研究報告において発表した。 一方、韓国では、現地調査によって平成25年度の本調査対象として設定している「木浦」における居留地周辺に発達した都市韓屋地区の保存状況と1910年以降に大きく発展した木浦駅周辺地区の現況を把握した。また史料調査では木浦市役所に所蔵される日本統治期の「土地台帳」「地籍図」の閲覧と収集を開始している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
台湾においては、多くの設計図面・古写真史料の収集ができ、かつ研究計画で設定した調査対象地である台中・嘉義・北港などにおいて現地での実測調査を順調に実施することができたため、予想以上に多くの研究成果が得られた。 韓国でも、研究計画で調査対象地に設定した木浦において、日本統治期の「地籍図」・「土地台帳」等の史料の閲覧に対する全面的な協力が得られ、旧居留地周辺に現存している近代都市韓屋の建築遺構の実測も可能であった。現地での調査協力が得られたことで、平成25年度に予定している旧居留地周辺地区における本調査のための準備が整えられたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に則り、平成25年度は、住宅遺構と集住形態、木浦駅前に展開した商業地区に焦点をあてて、韓国・木浦の旧居留地周辺地区での都市・建築調査(街区・街路構成、街並景観、建築遺構、地域コミュニティ、市場空間など)を実施し、すでに実測調査を終えている旧居留地地区との比較を行うことを研究の中心課題としたい。また、台湾でも補足のための現地調査(遺構・史料)を継続し、日本との比較検討も進めていくこととする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
海外調査が研究費内訳の中心となる。韓国・木浦における現地での本調査日程としては、4名×7日間程度を予定している。また台湾でも、補足調査(4名×5日程度)を検討している。また、都市史・建築史関係の研究文献および史資料の収集を継続することとする。
|