研究課題
本研究では、日本統治期の台湾・韓国・日本における近代都市空間を比較する上で、一般住民の生活の場となった商業街・市場や宗教・祭祀空間などを積極的に分析対象とすることで、伝統から近代への変容という連続的な視角をもちながら都市空間や居住形態の特質に迫ることを目的としている。平成26年度は、日本の門前町の都市空間形成に類似した台湾の北港について、平成24年度に実施した商業街・市場や宗教・祭祀空間に関する総合的な現地実測調査をもとに補足し、日本の市区改正計画が果した役割が明確となった。その結果を日本建築学会計画系論文集に研究論文として発表した。また台湾東部の花蓮について、花蓮市役所から提供を受けた詳細な都市計画図と日本統治期の市区改正図を比較することで、各地区の地割特性やその継承性など宅地割レベルでの特徴を抽出することができた。韓国では平成25年度に木浦における居留地周辺に発達した都市韓屋地区と1910年以降に大きく発展した木浦駅および公設市場の周辺地区について本調査を実施し、大正・昭和初期における日本による計画市街地と自生的な近代韓屋地区の居住形態の関係性を把握することができたが、その成果を報告書にまとめる分析・執筆作業を行った。2015年4月末に刊行予定であり、保存活用の基礎資料として木浦市役所をはじめ調査協力をお願いした現地各所への配布を準備している。なお、日本統治期の東アジアの商業空間を比較するために、同様に租借地であった中国・大連の連鎖商店街の実態について現地視察した。これら東アジアでの調査研究に対して日本では、近世・近代の博多を素材として「流」と称される伝統的な祭礼組織と近世・近代の地縁共同体の二重構造の変遷について考察している。以上から、日本統治期の台湾・韓国・日本における近代都市空間の形成過程と居住形態の比較と特質についえ総合的に比較検討を加えることができた。
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『住総研研究論文集』財)住総研
巻: №41 ページ: pp.97-108
『日本建築学会計画系論文集』
巻: 第79巻,第702号 ページ: pp.1827-1837