研究課題/領域番号 |
24560797
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
鈴木 智大 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 文化遺産部, 研究員 (60534691)
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キーワード | 福建省 / 中国 / 大仏様 / 黄檗様 / 禅宗様 / 禅宗寺院 / 穿挿枋 / 木造建築 |
研究概要 |
本研究は、木造建築の架構システムに着目し、日本・中国・韓国の比較をおこなうことで、東アジアにおける木造建築の技術およびその設計論理を解明する試みである。 4ケ年計画の2年目となる2013年度は、大仏様建築の源流と指摘されてきた中国福建省の建築について、重点的に考察をおこない、「甘露寺と福建省の古刹」(『鳥取環境大学紀要』12、2014年)、「黄檗様建築と中国建築の穿挿枋」(日本建築学会大会学術講演、2014年予定)として、論考をまとめた。 前者は中国福建省に現存する元代以前の遺構を網羅的に検討し、その変遷を明らかにした。そしてこれらの遺構群が中国の唐~元代における建築の変遷、また日本の古代・中世の建築を考える上で、重要であることを指摘した。 後者では、江戸時代初頭ごろ、福建省から日本へともたらされたいわゆる黄檗様建築について検討を加え、この建築に用いられる部材が、中国の明・清代の建築を考える上で重要な部材であることを指摘した。 さらに、本研究課題に先行する最も体系的な研究と位置付けられる関口欣也氏の著作集について、その書評を『建築史学』62(2014年)に発表した。各論文執筆当時の日中両国の研究状況を整理することで、氏の建築史学史上での成果を位置付けた。またこれらの研究成果について、現在まで蓄積されてきた調査・研究の状況と対照することで、今後の研究を発展させる上での課題を見出し、提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度は、本研究課題に関連して、上記の3本の論考を発表することができた。日中比較研究について、一定の成果を挙げたと考えている。 また同時に今後の課題を指摘し、2014年度以降の研究の進展を考える上で、よき指針を提示できた。 よって本研究課題は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度にまとめた論考をもとに、個別の建築に対する深い分析と、韓国を含めたより総合的な分析の両方を模索する。研究期間と予算と照らし合わせ、最良の方法を選択したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度は、所属機関である奈良文化財研究所に加えて、奈良県教育委員会事務局文化財保存事務所の実務研修員を兼務することとなった。そのため長期の出張をともなう調査をおこなうことが困難であった。よって本調査を2014年度以降の調査と合わせて実施することとした。 上記の方針のもと、出張のための旅費、また調査のための物品費として、計画的に利用する。
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