本研究は、木造建築の架構システムに着目し、日本・中国・韓国の比較をおこなうことで、東アジアにおける木造建築の技術およびその設計論理を解明する試みであった。 最終年度となった2015年度は、中近世以降期における日本と中国の木造建築の架構システムに関して、鈴木智大「法隆寺慶長修理の繋貫と中国建築の穿挿枋」(『日本建築学会大会学術講演梗概集』2015年9月)、鈴木智大「長崎唐寺における中国建築の穿挿枋」(『日本建築学会大会学術講演梗概集』2016年予定。前者では、飛鳥時代創建の法隆寺の慶長年間における修理の手法に注目したもので、中国の明代以降、多用された穿挿枋との共通性を指摘した。後者は、長崎の唐寺における穿挿枋の使われ方の変遷を明らかにしたものである。 また研究課題のまとめとして、「日本の仏教寺院建築における類型と様式」(『建築の分類体系の意味とその比較 東アジア前近代建築史・都市史円卓会議』東京大学生産技術研究所、2016年)と題して、清華大学建築学院(中国北京)において講演をおこなった。東アジア建築史の構築のために、日本建築史を見つめ直す試みであった。 今後、本研究で得た視点について、2つの方向性から発展させる。1つは近世へと視野を広げ、木造建築を検討する試みである。(若手研究(A)「中近世日本と東アジアにおける木造建築の変革に関する比較研究」(H28-31予定。研究代表:鈴木智大))もう1つは日中両国の木造建築用語の比較研究である。(挑戦的萌芽研究「日本と中国における古建築用語の相互訳および英訳を通した比較研究手法の創生」H28-30予定。研究代表:鈴木智大)。
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