研究課題/領域番号 |
24560798
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
左近 拓男 龍谷大学, 理工学部, 教授 (80271964)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 形状記憶合金 / マルテンサイト / メタ磁性転移 / リエントラント強磁性 / 磁場誘起歪み |
研究概要 |
Ni2MnGa型の磁性とマルテンサイト構造相転移の関係について研究するために、磁化、熱膨張、ならびに磁歪の実験を行なった。磁化測定は超伝導磁石とパルス磁石を用いて行なった。超伝導磁石はSQUID磁気測定装置を用いて行なった。定常磁場測定で最高磁場は10 Tであり,磁場挿引速度を変化させることで磁化の時間応答性も確認した。また,磁気冷凍の実用化のためにはさらなる高速磁場での応答性も確認する必要があるので,パルス幅(正弦波に直すと半波長分)が200 Hz程度の磁場での磁化過程M-H曲線を観測した。熱膨張は温度変化させながらの線膨張測定であり、歪みゲージを用いた四端子法で測定を行なった。磁歪は同じく歪みゲージを用いて、定温で温度を変化させながら測定した。Ni50-xCoxMn31.5Ga18.5多結晶では、x=9の結晶でリエントラントな強磁性が観測された。特に300 Kから390 Kでは,顕著な磁性と構造の変化が現れた。300 Kでは常磁性(または弱磁性)マルテンサイト相であるが、340 Kで磁場を印加して磁化を測定すると、メタ磁性転移が観測された。また、同様の温度で磁歪を測定すると、.0.11%の磁歪が観測された。これらのことから、340 K付近では磁場印加により、磁気的には常磁性ー強磁性転移、構造的にはマルテンサイトーオーステナイト構造相転移が起こっていることが確認できた。これは、磁場誘起型歪みを伴う逆マルテンサイト構造相転移であり、このことから磁性と格子の相関が強いことが証明された。磁化測定の際の磁場は200 Hzのパルス磁場であり、mSオーダーで高速の構造相転移が起こっていることも確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
格子変形と磁性の変化両面から観測できる実験系は、高機能磁性材料の研究において画期的であると考えられる。特に磁場応答性も観測できるという点が特徴である。新開発されたNi50-xCoxMn31.5Ga18.5多結晶において、巨大な磁場誘起歪みが観測されたこと、また、200 Hz程度の高速磁場でもメタ磁性転移が観測されたことは、磁性材料の開拓としては大きな成果である.また、x濃度を変えて濃度-温度相図も完成できた。
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今後の研究の推進方策 |
マルテンサイト転移に伴う磁気相転移と構造相転移の熱力学的考察を行なうための比熱測定を行なう。真空断熱型の比熱実験装置とする。アデンダと呼ばれる皿の下にヒーターと温度計を設置し,そのアデンダの上に試料を設置するが,磁場変化による温度上昇の影響を抑えるためにアデンダにはサファイア板を用いる。サファイアは電気伝導性が悪いが熱伝導性は適度であり,強磁場での実験には適当である。ヒーターには半導体であるカーボン抵抗を用いる。磁気冷凍効果の実験はヒーターを使わずに磁場を変化させて試料の温度上昇を確認する。またヒーターを使えば零磁場の比熱ならびに磁場中比熱が測定可能である。対象とするホイスラー合金では磁場中での比熱測定によりエントロピーを求めることが重要なので, 1.で使用した定常磁場用電磁石を用いて実験を行なう。実験の手順としては,まず,零磁場の比熱を求める。マルテンサイト変態付近では,構造相転移に伴う比熱の跳びも観測される。次に磁場一定下での比熱の測定を行ない,零磁場の比熱と比較する。磁場を加えると磁気エントロピーが減少するために,それによる比熱の変化も観測可能と予測される。また,磁気相図を作成し,後の理論的考察に用いる。さらに,磁化測定から求めた磁気熱量効果と,磁場による結晶全体のエントロピー変化を比較するために,等温で磁場を変化させた際の比熱を測定する。磁化測定では磁気モーメントのエントロピー変化は求められるが,磁場中での格子の変形(磁歪)によるエントロピーの変化は反映されないので,等温過程での格子系のエントロピー変化を確認する上で重要と考える。TMとTCが離れた組成での実験も行ない,マルテンサイト変態のみと,磁気相転移を同時に行なう組成との比較も行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
比熱測定装置の開発-----小型真空断熱チャンバー用材料 35 万円、温度計 5万円、サファイアアデンダ 3万円。寒剤液体窒素 500l (100Lあたり1万2千円)6万円 学会発表20万円,実験補助 15万円 学術雑誌投稿料 10 万円 合計 94 万円
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