研究課題/領域番号 |
24560798
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
左近 拓男 龍谷大学, 理工学部, 教授 (80271964)
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キーワード | ホイスラー合金 / 形状記憶合金 / 強磁性 / マルテンサイト変態 / 遍歴電子磁性 / パルス磁場 |
研究概要 |
Ni2MnGa系ホイスラー合金は,形状記憶効果を有することから,高機能合金として注目されている。我々は磁場中での物性的・磁気的機能性を検証するために,強磁場中での磁性の研究を行なっている。本研究ではNi50+xMn27-xGa23合金を用いてTMとTCが一致する合金 (x = 2.7) と一致しない合金 (x = 2.0, 2.5) で磁性がどのように異なるか検証を行なった。従来の遍歴磁性モデルでは,アロットプロットによる磁化の解析が行なわれているが,高橋はTC近傍でのMのδ乗vs. Hの関係がδ= 5であることを理論的に提唱した。これまでにNi2MnGaでは,西原らの磁化測定から,δ= 4.77であることが報告されている。Ni50+xMn27-xGa23(x = 2.0, 2.5) においてδ= 5ないし5に近い値が得られた。これらの結果をもとに,特性温度TAの導出を行なった。マルテンサイト転移温度の磁場依存性については,クラウジウス-クラペイロンの法則から説明されることが結論された。高橋の遍歴磁性の理論に基づく磁化Mと外部磁場Hの解析と考察も行なった結果,Ni52.5Mn24.5Ga23 において,TC近傍でのMのδ乗vs. Hの関係がδ= 5.0となった。これは理論と一致する結果となった。また, 実験結果から求めたスピンゆらぎの特性温度TAは1.06×10の4乗 Kであり,Niの値(1.76×10の4乗 K)と同程度の値となった。本研究では、磁化の磁場挿引速度応答性を観察するために半波周期が2msのパルス磁場において磁化測定を行なったが、Ni52.5Mn24.5Ga23 において高橋理論を説明する結果が得られた。TC近傍で,磁場上昇時と下降時の磁気履歴が観測されなかったことから、このような高速磁場挿引時にも等温状態であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構造相転移と磁気相転移が同時に起こる磁性合金はホイスラー合金の特徴であり、磁化測定と線膨張測定、磁歪が同時に観測できることは、格子物性と磁性の両面から複合的な情報を得られるということで画期的な研究である。本研究ではパルス磁場下での磁化測定により、高速磁場挿引時にも等温状態が実現していることが分かった。マルテンサイト転移温度の磁場依存性においては、DSCや比熱測定によるエントロピー変化の測定結果も用いて考察した結果、クラウジウス-クラペイロンの法則で説明されることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
これらの合金は磁場中での大きな磁気エントロピー変化に伴う磁気冷凍材料としても注目されている。磁場中での磁気エントロピー変化を磁化や磁場中比熱で測定することは、磁気冷凍効果を考察する上で重要である。今後は磁場中比熱を測定して、磁場中での磁気エントロピー変化について考察を行なう。また、磁化や磁場誘起歪みの磁場速度依存性について実験を行なう。この系の合金は数%もの磁場誘起歪みを発生する合金もあるが、磁気アクチュエータに応用する際には、歪みの磁場速度依存性が重要となる。これまでに、磁化変化の大きい4Tまでの磁場において、1msから20msの半波周期のパルス磁場を発生できるパルス磁場装置を開発した。2mFから3mFのキャパシターの個数を変えたり、パルス磁場コイルの巻き数を変えてインダクタンスを変化させることで周期を広範に変化させることに成功した。このパルス磁場システムや、定常磁場での高速挿引(0.2T/s)による磁化や磁場誘起歪みの磁気応答性について観測し、考察を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでに、周期が異なるパルス磁場発生装置を自作した。当初は20万円程度するオイルコンデンサを数個利用する予定であったが、2.7mF450Vと、オイルコンデンサー並みの容量、充電圧をもつ電解コンデンサで強磁場パルスが発生することが確認され、数十回の繰り返しでも、コンデンサに異常が起こらなかったことから、差額が生じる結果となった。 本研究のホイスラー合金の構造相転移を伴う磁気相転移に関しては、投稿中の論文もあり、多くの成果が得られた。これらの成果を発表するために米国での国際会議に参加する予定であり(MRS2014fall meeting, Boston),そのための経費として2014年度に使用する。また、低温での磁場誘起歪みの高速磁場応答性を観測する際に、液体ヘリウムを利用するために使用する。
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