研究実績の概要 |
Ni2MnGa1-xFex系は遠征に富み、また、xが0.275から0.400の広い範囲でマルテンサイト構造相転移と強磁性転移が同時に起こるのが特徴であり、構造と磁性の相関の強い磁気機能性について興味を持たれる合金系である。x=0.200の透磁率の磁場依存性は、室温から温度を上昇させると, TR=342 Kでマルテンサイト転移を起こし,L21立方晶のオーステナイト相となる。さらに, TC = 391 Kで強磁性転移が起こるが,この温度付近では立方晶のために磁気異方性が少ない合金である。高橋理論では,弱強磁性の金属や合金,化合物について解析がなされているが、TCも高く、電子相関の強い磁性体で成り立つかは興味が持たれる。 我々は東北大学金研強磁場センターの10T-CSM磁石および龍谷大学の水冷式ビッター型パルス磁場で磁化測定を行ない高橋理論を用いて解析した。高橋理論ではM5乗が磁場Hに比例する。 10T-CSM磁石の定常磁場での磁化実験の結果、M4乗 vs. H/MのグラフではTC = 391 K直下および近傍の磁化の結果は直線であるので高橋理論が適用できると考えられる。磁化の結果から求めた磁気モーメントや飽和磁化などのパラメーターを理論式に代入して、スピンゆらぎの特性温度TAを求めると,TA =2,800 Kとなった。Ni原子では17,600 K であるので,それよりも小さな値となった。TAは電子相関の強さに逆比例すると考えられるので,TAが小さいことは準粒子バンドの幅も狭く,電子相関がより強いと考えられる。パルス磁場の磁化の結果から求めたTAは3,000 Kとなり、定常磁場で求めた値と7%の誤差範囲で一致する結果となった。有名な強磁性体のMnSiではTAは1290 Kであるので、d電子系あるいはf電子系UGe2などの強相関電子系の磁性体よりも準粒子バンドの幅は広い結果である。
|