研究課題/領域番号 |
24560801
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
星野 敏春 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (70157014)
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研究分担者 |
藤間 信久 静岡大学, 工学部, 教授 (30219042)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遷移金属シリサイドの磁性 / 第一原理計算 / 密度汎関数法 / KKR-Green関数法 / 電子構造・磁性 / ハーフメタル |
研究概要 |
1. 正6面体B20構造の2元合金の遷移金属シリサイドXSi(X=Ti-Cu)の電子構造・磁性の第一原理計算(FPKKR&密度汎関数法の一般化勾配近似(GGA))を終え、X=Cr、Mn、Fe、Coの平衡格子定数の実験結果を1%以内の誤差で再現した。また、電子スピンも考慮する計算で、その基本的特徴(MnSiは金属・強磁性、FeSiは半導体・非強磁性、CoSiは金属・非強磁性など)を再現した。それらの基本的特徴は、非強磁性状態での電子状態密度と荷電子数変化によるフェルミ準位の変化で定性的に説明できる。本研究の計算によれば、電子状態密度の基本的特徴はXに依らず、フェルミ準位近傍に4つのピークが存在する。X=Cr,Mnのフェルミ準位は下から2つ目のピーク辺りに位置し、X=Feの場合には2番目ピークと3番目ピークの真ん中の谷に移り、X=Coの場合には3番目と4番目のピークの間の谷にフェルミ準位が移る。これらの結果を用いれば、ストーナの強磁性発現条件で説明できる。 2. 上記の2元合金を混合した3元合金Co(1-c)Fe(c)Siの電子構造・磁性の第一原理計算を終え(cは非整数)、磁気モーメントの濃度依存性の実験結果を定性的には再現した。Co,Feの原子配置の不規則性については、2倍のunit cell (16原子)の範囲内ですべての可能性を考え、それぞれの配置で全エネルギーを求め、その結果をBoltzmann分布で扱った。本計算によれば、遷移金属の磁性は原子配置で大きく変わる。析出の配置では磁性は消失するが、規則的配置で1番大きな磁性が生じる。Co濃度が小さい間(25%辺りまで)は、Fe中のCoが均一に配置し、Co当たり1ボーア磁子のモーメントが生じるが、Co濃度が増えると析出効果が強くなり、磁性は弱まる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 我々の開発したGGA-FPKKR法の第一原理計算で、B20構造の遷移金属シリサイドXSi(X=Ti-Cu)の平衡格子定数、電子構造とスピン磁性を調べた。X=Cr,Mn,Fe,Coの平衡格子定数の実験結果を1%以内で再現し、電子構造・磁性の基本的特徴を再現した。 2. 2元合金FeSiとCoSiを混合した3元合金Fe(1-c)Co(c)Siの濃度(c)依存性の実験結果を定性的には再現した。Co,Feの原子配置の不規則性については、2倍のunit cell (16原子)の範囲内ですべての可能性を考え、それぞれの配置で全エネルギーを求め、その結果をBoltzmann分布で扱った。遷移金属が析出していれば非磁性、規則的に並べば、Co1個当たり1ボーア磁子のモーメントが生じることを確かめた。Co濃度が低い合金では、Co濃度に比例して単位胞当たりの磁気モーメントが大きくなるが、Co濃度が25%を越えた辺りから、磁気モーメントの増加は小さくなるのは、Co原子の析出が起こることで説明できる。
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今後の研究の推進方策 |
1. 3元合金Mn(1-c)Fe(c)Siの電子構造・磁性の濃度依存性を本研究の第一原理計算で調べる。不規則配置の可能性については、2倍の単位胞(16原子)の範囲内で、いろいろな原子配置の可能性を調べ、磁性の原子配置の環境依存性を定量的に明らかにする。 2. 上記の系について、フェルミ分布の温度効果を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. 研究成果の海外発表。PRICM8(ハワイ、8月)での発表が受理されている。 出張費が必要。 2. 具体的計算を計算捕助者にお願いするので、謝金が必要である。
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