研究実績の概要 |
1.正6面体B20構造の2元合金XSi(X=Cr,Mn,Fe,Co)と3元合金Fe(1-c)Co(c)Siの磁性と電気伝導性の基本的特徴を我々の開発した第一原理計算で統一的に説明した。本研究の第一原理計算では、計算精度を上げるため、複素エネルギー面(Z=E+iΓ、Γ=πkT:E,Γは実成分と複素成分、Tはフェルミ分布の温度)に拡張した計算を行っている。3元合金規則相(c=0.25,0.5)では強磁性状態が安定で、minority spinのDOSに0.01Ryほどのバンドギャップが現れる。また、T=1500K辺りまでに磁性は消失する。フルホイスラー合金Co(2)MnSiの磁性はT=7000Kほどまで磁性が保持されているのに比べ、遷移金属シリサイドの磁性は非常に弱い。 2.Fe(1-c)Co(c)Siの磁気モーメント(M)の濃度依存性を、FeとCoの濃度平均の仮想的元素Xの2元合金模型XSiで調べた。Xの原子番号Z(X)はFe、Coの原子番号Z(Fe)=26、Z(Co)=27を用いて、 Z(X)=(1-c)Z(Fe)+c×Z(Co)と表し、3元合金の遷移金属原子の荷電子数を保存している(析出効果無視の模型)。Z(X)=26.08辺りで磁性が現れ、Z(X)=26.5ぐらいまでハーフメタル特性を表わし、Coの高濃度でMを過大評価する。単位胞2倍の計算で、析出相を含むいろいろな原子配置で得られるMをボルツマン分布で平均することで、Mの実験結果の濃度依存性を定性的に説明できた(析出効果を考慮。析出相で、M=0である)。 3.Mn(1-c)Fe(c)Siの磁性を2元合金模型で調べた。Feの濃度が増えると実験結果のMの値は理論値に比べ、激しく減少する。単位胞2倍の反強磁性効果を取り入れた計算で、定性的に説明できる。 4.格子歪効果を取り入れた計算を行えるように計算プログラムを開発・整備した。
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