研究課題/領域番号 |
24560802
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
藤間 信久 静岡大学, 工学部, 教授 (30219042)
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研究分担者 |
星野 敏春 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (70157014)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ジルコニウム非晶質合金 / 第一原理計算 / 水素輸送 / 局所構造 |
研究概要 |
ジルコニウム系非晶質合金に発現する,単電子/単プロトントンネリングやキャパシタンスによる発振等,興味深い現象のメカニズムの解明と,その応用としての機能性材料の開発を目的として,特異現象発現の鍵となるZr-Ni-Nb-H系合金の局所構造の研究を,第一原理計算(分子動力学計算)とXAFS等の実験的構造解析の結果を用いて行った。その結果,Zr-Ni-Nb正20面体クラスターを構造単位とする下記の局所構造とその特徴を明らかにした。 1. 非晶質合金の近似構造として,Zr-Ni-Nb正20面体クラスターを8個配置した原子数100個程度の単位胞構造を構築した。 2. 原子配置の異なる単位胞構造のうちのいくつかについて,第一原理分子動力学計算により正20面体構造をもつ最適化構造が得られた。従来の研究では得られていない最適化構造が得られたということは,この構造が局所的に安定に存在しうることを示している。 3. XAFS等の原子構造を反映する実験との比較により,原子構造の動径分布等が実験結果と一致する局所構造を同定した。 4. 構造最適化の過程において,正20面体をユニットとする構造から面心立方構造への転移が発現しうることを明らかにした。エネルギー的には面心立方構造の方が低く,この転移は,非晶質合金の結晶化(規則合金化)に相当するものと考えられ,安定な非晶質合金を構築するための知見を与えるものである。 上記研究成果を国際会議(ISSPIC16)において発表し,また成果をまとめた論文をJAPへ投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年の研究目的に掲げた,ジルコニウム系非晶質合金の局所構造の解明については,年度内におおむね目標が達成され,第一原理計算によって,実験的に得られている局所構造データと矛盾しない最適化構造が得られ,国際会議にて発表を行った。現在は得られた母体構造中に水素原子を入れた際の水素原子位置の同定,水素原子に対するエネルギー曲線および母体構造の変化について研究を行っている。また,局所構造の最適化の過程において,見出された非晶質構造から面心立方構造への転移については,当初の計画範囲外の成果といえる。ただし,投稿した局所構造に関する論文の採択については若干遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度までに,母体・ジルコニウム系非晶質合金の局所構造がほぼ明らかになったので,平成25年度以降は,この母体合金中に水素原子を1~数個程度加えて,水素原子の合金中の平衡位置,ポテンシャルを明らかにするとともに,水素原子による母体の構造の変化等,水素原子の合金中における振る舞いについて明らかにする。これにより水素原子添加により引き起こされると思われるクーロン振動等の特異な現象の起源について明らかにする。Zr-Ni-Nb系と類似の構造をもつZr-Ni系においても同様の第一原理計算による研究を行い,Nb添加の効果についても明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に購入した計算サーバに加え,本年度も,チップの性能上昇と価格の低下により,同程度の価格で計算能力が向上した計算サーバを購入し,ジルコニウム系非晶質合金への水素添加の効果を,水素原子の数・位置に関して広範囲にわたり計算を行う。 また,水素原子と遷移金属母体の電子状態(結合状態)を明らかにするためのソフトウェアライセンスを購入する。 国際会議・学会等への発表および連携研究者との議論にかかる旅費についても計上する。
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