前年度までの研究成果を踏まえて、H26年度は(1)回転磁場を用いたセメンタイト単結晶粒子の3軸配向および(2)セメンタイト焼結体磁石の試作を行った。 (1)については10T超伝導磁石のボア内部に間欠的に回転と停止をする試料台を設置してエポキシ樹脂(アラルダイト)に微細に粉砕したセメンタイト単結晶粒子を混練したものを静置して固化させた。印加磁場を3T、回転運動の条件を回転速度60rpm、磁場方向で2秒停止にした場合、セメンタイトの3軸が配向した試料を作製することができた。X線により極点図を作製すると、試料台の回転面に垂直な方向にセメンタイトのa軸、回転停止時に磁場と平行になる方向にc軸、両者の軸と垂直な方向にb軸が揃うことが確かめられた。この試料を用いて磁化曲線を測定するとセメンタイトの磁化容易軸がc軸、第2容易軸がb軸、磁化困難軸がa軸であることがわかった。さらに結晶磁気異方性エネルギーについて斜方晶の磁気異方性定数の2次の項のみを求めるとKac=0.33MJ/m3、Kab=0.25MJ/m3(T=5K)となった。これはFeの磁気異方性定数Ku1の数倍、Baフェライトとほぼ同程度である。 (2)については放電プラズマ焼結を用いて直径10mm厚さ1mmの焼結体磁石を試作した。試作した磁石を着磁したものの性能を評価するとおよそBr=0.1T、Hc=1kA/mであった。このことより、フェライトを永久磁石の材料として利用する場合は硬磁性体と組み合わせてコンポジット磁石とするか形状磁気異方性を利用して保磁力を高める形で利用することが必要であると考えられる。 以上より、セメンタイトの結晶磁気異方性を明らかにし、永久磁石材料としてのポテンシャルを調査するという本課題の研究目的は達成された。
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