研究課題/領域番号 |
24560805
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
小野 興太郎 島根大学, その他部局等, 名誉教授 (40106795)
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研究分担者 |
荒河 一渡 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (30294367)
宮本 光貴 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (80379693)
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キーワード | 照射損傷 / 鉄、鉄合金 / 核融合炉材料 / 重水素 / 電子顕微鏡観察 / ガスの熱離脱特性 / 格子欠陥 |
研究概要 |
格子間原子集合体の一次元運動、あるいは熱的安定性に及ぼす重水素の効果を調べるために、Fe-9Cr-2Wフェライト鋼と高純度(5-nine)Feに対して 5-10 keVのD2+イオンやHe+イオン、1MeVの電子線をそれぞれ電子顕微鏡内で照射し、格子間原子型転位ループを形成した。照射後の昇温に伴う転位ループの挙動を電子顕微鏡その場観察するとともにビデオに記録した。また、同様に照射した試料からのガス熱離脱特性の測定も併せて行った。 主要な成果は、 1.De+照射によってFe-9Cr-2W中に形成された転位ループは、電子線照射や、He+照射の場合と比較して、かなり低い温度(400-500 K)で移動消滅することが明らかになった。He+照射の場合はバブルによる転位ピン止め効果、電子線照射では照射誘起偏析した合金元素によるピン止め効果が考えられる。一方D照射の場合には、転位線に偏析したD原子が転位歪み場への合金元素の偏析を妨げ、ループの移動消滅を他の照射の場合よりも容易にした可能性が推察される。(J. Nucl. Mater. 投稿中) 2.上記の転位ループの消滅と重水素の熱離脱には密接な関係があることが分かった。熱離脱特性の照射量、昇温速度依存を測定し、重水素の転位ループからの離脱に必要な活性化エネルギーを得た。(J. Nucl. Mater. 投稿中) 3.D2+イオンを照射した高純度Fe試料からの重水素の熱離脱特性を測定すると、350 K付近と390 K付近に放出ピークが観測された。これは、バーガースベクトルの異なる転位ループからの熱離脱と考えられ、電子顕微鏡観察によるループの移動の測定結果と併せて、重水素の効果の詳細を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果を2編の論文にして投稿中である。 さらに、高純度Feでは、二つの重水素放出ピークがあることや、転位ループの核形成に重水素が関与していること等、当初あまり念頭に無かった新たな発見と課題も見つかり、鋭意研究中である。
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今後の研究の推進方策 |
1.前年度に引き続き、高純度Feの重水素照射を行い、重水素の熱離脱特性と転位ループ挙動の関係を調べる。また、重水素は転位ループの核形成にも関与しているので、ループ密度の照射量、照射温度依存を調べ、核形成過程、移動過程の両面から重水素の効果を調べる。 2.一方、面心立方金属である超高純度Cuについて同様の重水素照射を行い、転位ループの一次元運動に対する重水素の効果を電子顕微鏡その場観察と熱離脱特性の測定の両面から調べる。 以上の結果から、転位ループ一次元運動に対する重水素の効果について結晶構造を踏まえた体系的知見を得ることを目指す。 4.以上の研究成果を総括して報告書にまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験試料を購入予定にしているが水素焼鈍などの熱処理に時間がかかり、当該年度内に納入されていないためである。 当初の予定どうり実験試料を購入する予定である。
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