研究概要 |
昨年度に引き続き、過冷却液体領域での鍛造に適した材料組成の検討を行った。昨年度の結果から、Co40Fe22Nb8-xZrxB30 (x = 2, 4), Co23Fe40Nb5.5B31.5などが結晶化の潜伏時間が長く、過冷却液体領域での鍛造に適しているものの、飽和磁化が低い点が問題であった。今年度は、ガラス形成能と飽和磁化の向上を目指し、Fe基金属ガラスへのYの添加を試みた。 高い飽和磁化を有する(Fe0.8Co0.2)96-xBxSi1Nb3 (x = 15, 17)合金はガラス遷移を示さないが、Nbの一部をYで置換することによりガラス形成能が向上し、17 at% B、2~3 at% Yではガラス遷移が観測されることが分かった。また飽和磁化は、Y濃度の増加にともない最初は減少するが、1 at%付近から上昇に転じ、2 at%付近で極大を示す。それにより、2 at% Yの合金はY無添加の合金よりもわずかながら高い飽和磁化を示すことが分かった。 更に、高いガラス形成を持つ[(Fe0.5Co0.5)0.75B0.20Si0.05]96Nb4合金においてNbの一部をYで置換した結果、2 at% Yで飽和磁化が約7%向上し、ガラス遷移温度付近における結晶化の潜伏時間も約2倍に増加することを見出した。従って、Fe-Co-B-Si-Nb合金のNbをYで部分置換する手法は、高いガラス形成能(長い結晶化の潜伏時間)と高い飽和磁化の両立に効果的であることが分かった。 また昨年度に引き続き、圧縮試験機を用いた鍛造の基礎的検討として、試料の加熱方法について検討を行った。ハロゲンランプを用いた加熱方法では、試料と同時に試料周辺の治具等も加熱されるため、治具等の大きな熱容量の影響で、加熱後に試料を速やかに冷却できないことが問題となった。そこで、試料自体を発熱させるジュール加熱方式を採用することとした。
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