研究実績の概要 |
過冷却液体領域での鍛造時の加熱方法として、高速昇温・高速冷却が可能なマイクロセラミックヒーターで加熱することを検討した。応力分散用のステンレス板を介してセラミックヒーターで試料を挟み、試料を加熱した後、油圧プレスで鍛造を行った。試料には、過冷却液体領域ΔTxが広い[(Fe0.5Co0.5)0.75B0.20Si0.05]96Nb4 (合金1: ΔTx = 43 K)、Fe70Mo5P10C10B5 (合金2: ΔTx = 76 K)、Fe55Co10Ni5Mo5P10C10B5 (合金3: ΔTx = 87 K)を用いた。その結果、全ての合金で直径1 mm程度の丸棒を厚さ0.5 mm程度の厚板に加工することに成功した。鍛造の条件は、温度は約1.049Tg~1.058Tg (Tgはガラス遷移温度)、印加応力は約60 MPaであった。鍛造後の試料は、合金2、3ではガラス単相構造と良好な軟磁気特性を維持していることが確認できた。合金1は部分的に結晶化したものの、軟磁気特性は維持されていた。 また昨年度に引き続き、過冷却液体領域での鍛造に適した材料組成の検討を行った。昨年度までの成果から、(Fe, Co)-B-Si-Nb合金のNbをYで部分置換することによりガラス形成能と飽和磁化の両方が向上することが明らかであるため、Yを他の希土類元素に変更して、その添加効果について検討した。他の構成元素との混合熱に着目し、希土類元素の中で他とは異なる値を示すYbを選択した。Feとの混合熱が正であるためYbはごく微量しか添加できなかったが、アモルファス相の熱安定性が顕著に向上し、Nb添加量低減の効果と合わせて飽和磁化が10%以上向上することが確認できた。
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