研究課題/領域番号 |
24560807
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
橘 勝 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (80236546)
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キーワード | ナノカーボン / グラファイト / グラフェン / 燃料電池 / 白金代替触媒 |
研究概要 |
カーボンナノウオール(CNW)とは、基板に垂直に配向した二次元シート状物質である。その構造は、ナノグラファイトドメインからなるドメイン構造をとる。このようなユニークな形状および構造は、その成長メカニズムだけでなく燃料電池電極といった応用まで広く興味が持たれている。本研究では、これらの成長制御と電極材としての応用に関する研究を進めている。25年度は、CNWの特徴であるドメイン構造に焦点をあて、その成長過程を明らかにすることを目的とした。また、24年度に引き続き燃料電池電極への応用を目指し、白金担体さらには白金代替触媒の開発を進めた。 まず、成長過程の観察においては、様々な条件下で生成したCNWのウォールサイズやドメインサイズが成長初期のグレインサイズと強い相関を示すことがわかった。これは、成長初期に生成されているグレインが成長の基本単位になっていることを示唆している。これはCNWの成長のメカニズムといった基礎的な興味だけでなく、成長制御の観点からも大変重要な知見であり、より詳細な評価を26年度は行っていきたい。特に、基板に対して垂直になるメカニズムは基礎的にも実用的にも大変重要な課題である。 次に、燃料電池電極への応用であるが、24年度は、窒素ドープのCNWが、開始電圧0.8V以上といった高い触媒活性を示すことを明らかにした。そこで25年度は、実用化に向けて、カーボンメッシュの電極に直接窒素ドープのCNWを生成して、これを剥がすことなくそのまま電極として利用する測定方法の確立を目指した。結果として、窒素ドープのCNWのカーボンメッシュへの直接生成とその酸素還元反応(ORR)活性の測定に成功した。26年度は、ORR活性の評価に加え、最終的な電池としての性能(電流―電圧特性)を評価し、実用化に向けた基礎データの構築を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
燃料電池電極応用に向けた新規白金代替触媒の開発において、当初の予定とは異なり、純粋な窒素ドープだけでは大きな触媒活性が得られないことがわかった。これはCNWだけでなく他のカーボン材料でも同様であると考えられる。特に、25年度に明らかにした白金代替触媒では極めて微量な鉄が窒素ドープのCNWの触媒活性の増強に大きな影響を及ぼすことがわかった。したがって、当初予定していた触媒活性のメカニズムの解明に関しては少し遅れているが、今後の白金代替触媒の開発においては極めて有用な結果を得たと自負している。26年度の発展が楽しみである。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予想通り、25年度は白金代替触媒の開発が主体となった。しかし、前述のように、結果については、当初の予定とは異なり、新たな白金代替触媒の開発となった。具体的には窒素ドープのCNWと微量の鉄が重要な成分であることが明らかとなった。今後は、鉄成分の最適化や構造、電子状態の評価から触媒活性のメカニズムを明らかにしていきたい。26年度もやはり白金代替触媒の開発やそのメカニズムが中心となるが、それらの作製方法や基礎物性も当初の予定通り行う予定である。
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