研究課題/領域番号 |
24560809
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
矢野 一雄 日本大学, 理工学部, 准教授 (20256803)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 強相関電子系 / 重い電子系 / Kondo 効果 / RKKY相互作用 / 崩壊的減少 |
研究概要 |
平成24年度に実施した研究内容は、下記の通りである; <試料作製> 当初は、課題及び交付申請書に記載したように、Ceを非磁性希土類元素のYで置換した(Ce-Gd)Ni→(Y-Gd)Ni系化合物単結晶試料のうち、10at%≦Gd≦20at% のGd低濃度組成を中心に作製し、それに対して磁気的な性質を詳細に測定・解析をすることから攻究を展開する計画であった。具体的には、Ceの特徴・特異性と(申請者が)考えている、Ceが存在することによりGd-Gd間の相互作用(RKKY相互作用)が通常あるべき状態から阻害され、崩壊的な減少を何らかの理由・原因によりもたらしていることを明確にすることから研究を開始した。ところが、ブリッジマン法によりGd=15at %の(Y0.85Gd0.15)Ni 単結晶試料の作成を試みたところ、予想していたよりも融点が高く1,150 ℃では十分に溶解しないために良質な単結晶試料を得ることが容易ではないことが判明し、(Y-Gd)Ni系化合物は(当面は)単結晶に近い多結晶試料で攻めることにした。と同時に、非磁性希土類元素としてCe→Luを用いた(Lu-Gd)Ni系化合物試料の単結晶試料作製を、当初予定していた平成25年度から繰上げて、平成24年度に作成を試み、この系の単結晶試料の作成は可能である見通しを得た。 <磁化測定>平成24年度は、上述したことから基本的な磁化測定・解析に的を絞り、実行した。平成24年度に得られた試料(良質な多結晶と単結晶)について、詳細な磁化測定を行ったところ、Gd=15, 20 at&ともに磁化Mの温度依存性はフェロ的な曲がりを示し、(Ce-Gd)Ni系で特徴的な、磁化Mが温度に対して”直線的”な減少・変化は見られない。これは、Gd-Gd間の交換相互作用(RKKY相互作用)は崩壊的な減少をすることはないことを示唆する、という知見を得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定・計画していた試料のうち、最初のCe→Yで置換した系(Y-Gd)Ni系化合物の単結晶試料作成のところで、想定していなかった事態、融点が高く通常のブリッジマン法での単結晶試料作成が容易ではないことが判明したことに加えて、液体ヘリウムの価格が高騰し、かつ入手が容易ではなくなったため磁化測定も思うように進められず、想定していたように研究が進展・展開できなかったことが大きな理由として挙げられる。しかしそのような中でも、再度、目標を達成するための方策を検討し直し、Ce→Yへの置換については、暫定的に良質な多結晶試料で特性を評価することにし、当初は次年度の平成25年にやる予定だったCe→Luでの置換系に着手し、試料作成の目処がたち、磁化測定に着手できる状態まで行けたことと、(Y-Gd)Ni系の良質な多結晶試料についての磁化測定から、RKKY相互作用の崩壊的減少は、Ceの特異性に起因する可能性が高いと推察されることの知見が得られ、体勢を立て直すことができたことは次年度に繋がることと評価できるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の前半は、単結晶試料作成の目処がたった(Lu-Gd)Ni系化合物の作成と磁気特性及びその解析を中心とし、それに(Y-Gd)Ni系の単結晶化を試みる。後半は、Ce→Laの(La-Gd)Ni系に移行する。実は、(Ce-Gd)Ni系と(La-Gd)Ni系とは同じ結晶構造を持ち、Laの酸化の問題はあるものの、単純に比較・議論ができる点でメリットは大きい。 後半は、巨視的な磁気特性の測定・解析に加えて、微視的な情報を入手できる軟X線MCDと磁気コンプトン散乱MCPの実験に着手できるように、日本の大型放射光施設SPring-8に課題申請を行い、平成25年から平成26年の2年間に最低でも1回は実験できるように努力する。強磁場を用いた磁化測定は、つくば市の物材研で行う計画であるが、この実験はスピン・フリップ、メタ・マグ転移、等々の重要な情報を提供してくれる可能性があり、期待している実験である。加えて、電気伝導等の電子の輸送現象に関係することも富山大学との共同でスタートをきり、データの蓄積を始めるととともに、問題点の洗い出しを行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の予算のうち、約10万円が平成25年度に繰越された理由は、平成24年度に予定していた放射光の実験を実施できなかったことにある。原因は、当初は原研の岡根氏との共同研究として、原研の専用ライン(SPring-8の23番ビームライン)での実験を予定していたが、原研側の計画の変更にともない、SPring-8の一般課題の申請・採択のプロセスを踏む必要が生じ、そのための準備が十分できなかったことに起因する。平成25年度と26年度に複数回の放射光実験の申請を計画しており、そのうち1,2回、課題が採択されて実験ができれば、十分な情報を得ることが可能であり、その際に有効に使用したい。
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