研究概要 |
平成25年度に実施したことは,同じ結晶構造を有する2つの化合物CeNiとGdNiの混結晶系化合物とCe→Yで置換した系の単結晶試料を作成し,それらの構成元素である,Ce, Gd, Ni各々の電子状態を巨視的手法である磁化測定と,微視的手法の磁気円2色性(Magnetic Circular Dichrosim, MCD) から実験的に調べたことである。得られた成果は、大別すると次の2つに集約される; (1);重い電子系化合物として有名なCeNiが示す"特異な"磁気的性質(Pauli-para,パウリ-パラで代表させる)を理解する上での"1つの"手掛かりを与えてくれる可能性があり得ると期待される,RKKY相互作用の"崩壊的"な減少が、Ceに特有な現象の可能性があり得るか否かを調べるために、Ce→Yの非磁性希土類元素で置換した(Y-Gd)Niについて、巨視的な磁化測定から調べた。それらの結果と(Ce-Gd)Ni 系の結果を比較することにより、Gd-Gd間の交換相互作用,すなわちRKKY相互作用の崩壊的な減少は,Ceに帰着される可能性が高いことが判明した。但し,(Y-Gd)Niと(Ce-Gd)Ni系とでは、結晶構造が多少異なるため多少の曖昧さが残り,平成26年度はこれを詰めて解決する。 (2);(Ce-Gd)Ni系単結晶化合物の試料のうち、Gd-rich組成なGd=0.8と0.5に対して,SPring-8の軟X線MXD (XMCD)測定を行い,興味深い,有意な測定結果を得た。 ①Gd-rich組成域では,Ce, Gd, Niのいずれもが明確な磁性を有し、Ceも本来の軽希土類元素として期待される,Ce↓Ni↓Gd↑という磁気構造をとる。 ②Ceは4f電子に起因する磁気モーメントを有しているが,CeRu2Ge2に比べて相対的に遍歴性が大きく、Gd=0.5では磁場依存性を示す(0.8ではない)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[研究実績の概要]に記載したように、 ①CeNiの特異な磁気的な性質を示す電子状態を理解するための”1つの”確かな手掛かりになり得ると期待されるRKKY相互作用の”崩壊的減少”について、(Y-Gd)Ni系化合物の試料作成を行い、その磁気的な特性を(Ce-Gd)Ni系化合物の結果と比較することにより、この特徴的な現象はCeに特有である可能性が高いことが判明した。これは、今後の展開にとって、大きな意味を持つ。②加えて、(Ce-Gd)Ni系単結晶化合物のうちGd=0.8と0.5のGd-rich組成の単結晶試料に対して軟X線MCD(XMCD)の測定を実施し、Gd,Ni,Ceのそれぞれの磁性を担っている電子である、Gd_4f,Ni_3d,Ce-4fの電子状態について、それらの磁場依存性と温度依存性を知ることができた。とりわけ、実験を行った組成域では、Ce_4f電子についての情報・知見は重要で、Ce_4f電子は、 ・基本的には"軽"希土類としての特徴を有する磁性元素であり、その磁気モーメントはNiのそれに平行で、Gdのそれに反平行である;Gd↑Ni↓Ce↓。 ・Gd=0.8では、その磁場依存性は殆どないが、Gd=0.5での磁場依存性は明確にある。 ・Ce_4f電子に起因する磁気モーメントは、磁場H≧2 Teslaで減少し始める。想定以上に低磁場で、スピン・フロップが起こっているように見える。これらの情報・知見も今後の展開にとって、極めて有用である。これらの結果は、'13/08 に開催された強相関系の国際会議(SCES13)でそれぞれポスター発表を行い、更に論文・プロシーディングスに纏めることができた。またGd=0.8_XMCDの結果は、単独で学会誌への投稿を準備中である。
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